兄といえば、「はいはい」と、若干笑いながら、慣れた風に猫汰の上に居座り続けている。

「うわーーーーーん!!」癇癪がピークに達して、わけが分からなくなって、それでも力の限り喚き続けて。

――――気づけばリビングで事切れていたらしく、猫汰は朝日に起こされた。

いつの間にか、猫汰を押さえつけていた兄はいなくなっていて、代わりに、リビングの机の上に、「朝ごはんは冷蔵庫にはいってるよ」と書かれたメモが残されていた。

当然、ハシノビは持ち去られたあとだ。

「…………………………」

思いっきり顔をしかめたあと、猫汰は冷蔵庫を開けて、兄が作った朝食を乱暴に取り出して、乱暴にレンジにつっこんだ。

チンして温め終わると、無造作に朝食を口につっこみ、よく噛まないまま水で流し込んだ。

あらかた空腹が収まると、歯を磨いてから自分の部屋にもどり、布団を頭まで被って膝を折った。

イライラしててもしょうがない。

兄のハシノビが手に入らなかったのなら、俺は目的のため別の解決法を見つけなければならない。

諦めたらそれまでだ。

だからそのために、今は栄養と睡眠をとって次に備えよう。

打開策を考えるのは、そのあとだ。



その日の夕方。

「みつー!」

再び光貴の店に訪れると、ちょうど定休日を満喫していたらしい店主が、「よお猫汰。ハシノビどうだった?見つかったか?」昨日の進捗を早速尋ねてきた。

荒い足取りで店の中に入り、光貴が座っているカウンター席の隣に腰かけると、「だめだった!」正直に結果を話した。

「あー、やっぱり?」相手が、予想してました。みたいなむかつく顔で笑う。

「どうせお前のことだから、おにーちゃんのアトリエにハシノビがある!と踏んで盗もうとしたら、詩織さんに返り討ちにされたんだろ」

「ちくしょう!詩織ちゃんもみつも!見てきたように人の行動を読むんじゃない!」

「だってお前分かりやすいからさぁ。
まーしかし、これでハシノビ入手の道は途絶えたな。どーすんの?お前の好きな子に、素直に告白して粉砕されてくる?」

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