カウンター席に座った猫汰の隣に同じく座って、「えーと、精神を操作する魔法薬は確かこの辺りに……」ぶつぶつ、独り言をつぶやきながら、持ってきたノート数冊をの中身を検めはじめた。そして。
「……お!あったあった!これだ!」該当する資料を見つけたらしく、「どれどれ!?」猫汰も食い気味にノートを覗き込んだ。
「これだよ、猫汰。えーとな、構成図はこの図の通り書いて、その上に器を置く。やりやすいから鍋とかで良いな。それで、鍋の中に、ヨモギ、ハコベラ、タメカズラ、ハシノビを入れて……」
惚れ薬の作り方を説明していた光貴が、不意にどもった。そして固い声で言う。「あ、だめだ。つくれねぇわ」
「え!?どうして!?」あと一歩だっていうのに!今更ダメでしたなんて許さない!
恨みがましい目で睨みつけると、「いや、ごめんて。でも、材料がひとつ足りないんだよ」光貴は、「なにがダメか」を改めて説明し始めた。
「ヨモギ、ハコベラ、タメカズラ、まではうちにも備蓄があるんだけどよ、最後のハシノビが、うちにないんだよ」
「ハシノビってなに!?どこで手に入るの!?通販で売ってる!?」
「売ってないな。ハシノビってのはかなり貴重な草で、童貞の精液使って作るマンドラゴラ並に手間暇かかる植物なんだよ。
まず密林通販じゃ手に入らないし、お前程度の魔法使いじゃ自作するのも到底無理だし、あと自生してるものを探すすべもお前にはない。ちなみに俺もない」
知り合いに頼み込んで分けてもらうのも難しいんだよなぁ。と、材料の希少性を語る光貴の隣で、猫汰は怒りに打ち震えた。
もうちょっとだっていうのに、レシピまで分かったのに、なんたる様だ。
どうしたらこのたったひとつの、しかし最難関の問題が解決するのか。猫汰は怒りに震えながらも、考え、考え、考えそして。
「あ」ひとつの可能性に思い至る。
「みつ!このノート写真に撮って良い!?」
「いいよ?」
「ありがと!」
猫汰はすぐさま、惚れ薬の作り方が書かれたページをスマホで撮影すると、「ありがとー!それじゃ俺帰るね!」再度店主に礼を言ってから店の出入り口に向かった。
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