的確な分析に、猫汰は軽く唸った。

出来れば理由はふせたままレシピだけ教えてくれないかなー。なんて思ってたけど、やっぱりそうもいかないか。

言わないと教えてくれなさそう。けど、教えたら反対されそうだから教えたくない。

猫汰は数秒、ぐるぐる考え込んだあと、結局いい折衷案が思い浮かばず。

「……あのね、好きになった子が男の子なの。俺が相手を好きになっても、相手がそうなってくれるとはかぎらないじゃん?いくら俺が好きになってもらえるよう努力したとしても、同性の壁がそれで打ち破れるかどうかは分からないじゃん。
だから、てっとりばやく、まずは魔法で好きになってもらおうと思って……」

「素直に言って、兄に応援してもらう」という望みの薄い賭けに出た。すると、案の定、兄は顔に難色を浮かべた。そして、「残念だけど、その意見に賛成はしてあげられないかな」と答えた。

「筋は通っているけれどね、それは猫汰の勝手な都合で相手の気持ちを変えるということだろう?僕は君に、魔法をそういうことに使ってほしくないかな。奇跡というのは都合が良い分だけ人を不幸にもするからね。

それに、男同士って言うのも賛成しないかな。男同士で付き合っていくっていうのはこの国の社会ではまだ受け入れがたいことだからね。それが君を不幸にしないとは限らない」

その通りだ。その通りだけど。

「―――やってみないと分からないでしょ!」

説教を遮る形で叫ぶと。

「やる前から失敗の想定がつくことをやってみるのは危ないということを言ってるんだ、猫汰。聞き分けなさい」

合間をぬって説教を再開された。業腹である!

「やだやだ!詩織ちゃんのバカ!もういいもん俺自分でなんとかするもん!」

「あっ……猫汰!まちなさい!」

兄が止めるのも聞かず、猫汰はマンションから飛び出すと夜の町に駆けだしていった。そして、知り合いの居酒屋へ向かった。

「――――ちょっとみつ!いるんでしょ開けて!!」

営業時間の過ぎた店の前で、がんがん、どんどん、扉を打ち叩くと。しばらくして。「うるせぇな!!誰だこんな時間に!!」店の店主こと青 光貴が怒鳴りながら出てきた。

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