それこそ異物混入じゃね?と思わなくもないが、兄はいたって真面目にこの話をしているので、猫汰は兄を応援すれど、突っ込みはしないのだった。

というわけで、兄は魔法をビジネスや人のために使用、研究に努め、弟の猫汰は、魔法にさほど興味がないのでつまんで食べるくらいの利用をしていたのだが。

猫汰が18歳になった時、猫汰はとある魔法が使いたくてたまらなくなってしまった。

それがなにかと言えば、そう、「こちらに惚れさせる魔法」だ。

一応前置きしておくが、猫汰は人並以上に見目がよく産まれついたため、そもそも「人に惚れられる」という経験をそれこそ人並以上に経験してきた。一時期は、彼女を月替わりさせていたくらいだ。

だから、「もてないからそれを使用したい」のではなく、「それを使用したい相手」が出来たのだ。

始めて他人を好きになった。「初恋」というやつだ。なんとしても叶えたい次第の猫汰だった。

けれど、相手に「付き合って」とは声をかけられない。なぜかといえば、好きになった相手が「男」だったからである。

相手が同性であると、猫汰が相手を好きになっても、相手がそうなってはくれない可能性が浮上する。いくら猫汰が努力してもだ。

だから、猫汰は「相手に魔法を使いたい」と思ったのだった。

魔法で惚れさせておけば、とりあえず「相手にも男を好きになってもらうにはどうしたら」という問題がクリアできる。

そして、魔法の効果が切れるまでに、「俺たちは付き合っている」という既成事実を作って置くのだ。本来の気持ちの問題など猫汰にとっては二の次だ。まずはかりそめでも枠を作っておくことが大事なのだ。

というわけで。

「ねえ詩織ちゃん。たしか魔法薬の中で、惚れ薬のレシピってあったよね?あれ、教えてくれない?」

早速、マンションに帰宅した兄に相談したところ。兄は一瞬顔をしかめたあと、にっこり笑って「なぜ?」と言った。

「好きな人が出来たの」

「それは分かってるよ。猫汰。僕はね、なぜその相手を惚れ薬で手に入れたがっているかを聞いているんだよ。
君の性格なら、好きになった相手にはまず行動をしめすだろう?魔法なんて頼らないはずだ。
だから、魔法を頼るなにか理由があるんだよね?それを教えて」

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