「おかえ……どーしたの豪星くん。レイプされたようなかっこうして」
うちにかけ戻るなり、カップめんにお湯をいれていた父親があっけにとられてつぶやいた言葉に、「されたんだよ!!」思わず叫ぶ。
「え?本当にレイプされたの?」
「されそうになった!!いいいいいきなりすごいことされそうになった…!!」
おかげさまで、服はぼろぼろだし、逃げて来る時におもいっきりひっかかれた。駆け戻る途中も、あちこちぶつけたり転んだりして、いまさら痛みが追いつく。
「な、な、なんだったの……っ」
「……ははーん」父親が、片手で口をふさぎ、斜めに構える。
「ねえ豪星。君をレイプしたのって、あのオメガの子じゃない?」
「おめがの子??」だれの事だ。検討がつかない。
「ほら。あの子だよ。君がこの前頭打って入院した時、助けてくれた子がいたでしょう?うちに着替え取りにもきてくれた」
「―――そ!そのひと!」食いつく豪星に、ちょっと身を引いた父親が、「そっかぁ」と、気のない返事をひとつ。
「ふーん?やっぱりそうか。なーんか変だなーとは思ってたんだよ」
「なにが……?」
「だって行きずりに対して親切過ぎでしょ。病院つれて見舞いにいくだけならまあ、あるとしても、わざわざうちに連絡を届けたり、着替え持ってたりさぁ。下心が透けてみえるよね?」
「???」
「ま、理由はすぐにわかるんじゃないかな」
多分、すぐ追いかけて来るよ。
その言葉に、二度目のなにが?を言う前に。
ピンポーンピンポーンピンポーンピンピンピンピン!!!
押し過ぎてなり切らないほどのチャイムが部屋中を走る。身を縮めた豪星とはちがい、「はいはーい」父親がのんびり扉に近づいて、ドアノブをひいた。チャイムを押していたのは。
「こら!!豪星くん!!逃げるな!!」数十分前。逃げ出したその人が立っていた。
「ひえ!!」喉をしぼったような悲鳴がせりあがる。
「ひとがせっかく!!薬やめて据え膳してやったってのに!!なに逃げてんの!?なに情けないことしてんの!!?アルファならがっつりこいよお前!!ふざけんなよ!!」
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