性器も未熟で顔もぼんやりなんて、どう転んでもハードじゃない?
ははは。笑えない。
「はーーーーーーーーーーーーーー…………」
なんだか歩くのすら面倒になってきた。
目を閉じたら全部夢だった。なーんてオチにならないかなー。
はははさすがに無理かーははは。
「……いっ………!!」
冗談交じりに目を閉じた所為で、道の表面が欠けて、くぼみが出来ていることに気づかなかった。かかとがそこにちょうどよくはまり、上体を後ろに崩してごつんと転ぶ。
「………ぁっ!!」背中と頭に激痛が走った。かと思えば、ぐわんと視界が揺れ、真っ白にかすんだ。
一瞬だけ見えた空の向こうで。
「……み!……じょうぶ!?」
誰かの叫ぶ声が、聞こえたような気がした。
*
「…………う、」
ゆっくりとまぶたが開く。顔の上には夕陽のオレンジ色がさしこんで、夜の訪れをサインしていた。
豪星は、真っ白なシーツの上にいた。天上も壁も白く、生活感の無い香りがする。
どこだろう。ここ。
頭を動かして、確認しようとするも。「い!!……だ……っ」強烈な痛みに襲われる。頭を押さえて震えていると、不意に、窓ガラスに自分の姿がうつりこんだ。
頭部に包帯が、ぐるぐるにまきつけられている姿に、ぎょっと目を剥く。
なにこれ!?と、目をこらしてみようとしたが、「あだだだだ!!」ふたたび激痛に襲われる。どうやら、包帯を巻いている部分から痛みがにじんでいるらしい。
……まてまて。落ち着け。
目を覚ます前までの前後をゆっくりと思い出してみる。
たしか、学校から帰る途中で。何時もの路地を通ってて……。
あ、そういえば派手に転んだような。
あ、そうか。転んだ時に頭からケガして、意識を失ったんだ。
病院にいるっていうことは、誰かが救急車を呼んでくれたんだな……。
人気のない路地なので、誰かに助けてもらえたのは不幸中の幸いだ。お礼を言わなきゃ。と、思った最中に。
5>>
<<
top