性器も未熟で顔もぼんやりなんて、どう転んでもハードじゃない?

ははは。笑えない。

「はーーーーーーーーーーーーーー…………」

なんだか歩くのすら面倒になってきた。

目を閉じたら全部夢だった。なーんてオチにならないかなー。

はははさすがに無理かーははは。

「……いっ………!!」

冗談交じりに目を閉じた所為で、道の表面が欠けて、くぼみが出来ていることに気づかなかった。かかとがそこにちょうどよくはまり、上体を後ろに崩してごつんと転ぶ。

「………ぁっ!!」背中と頭に激痛が走った。かと思えば、ぐわんと視界が揺れ、真っ白にかすんだ。

一瞬だけ見えた空の向こうで。

「……み!……じょうぶ!?」

誰かの叫ぶ声が、聞こえたような気がした。



「…………う、」

ゆっくりとまぶたが開く。顔の上には夕陽のオレンジ色がさしこんで、夜の訪れをサインしていた。

豪星は、真っ白なシーツの上にいた。天上も壁も白く、生活感の無い香りがする。

どこだろう。ここ。

頭を動かして、確認しようとするも。「い!!……だ……っ」強烈な痛みに襲われる。頭を押さえて震えていると、不意に、窓ガラスに自分の姿がうつりこんだ。

頭部に包帯が、ぐるぐるにまきつけられている姿に、ぎょっと目を剥く。

なにこれ!?と、目をこらしてみようとしたが、「あだだだだ!!」ふたたび激痛に襲われる。どうやら、包帯を巻いている部分から痛みがにじんでいるらしい。

……まてまて。落ち着け。

目を覚ます前までの前後をゆっくりと思い出してみる。

たしか、学校から帰る途中で。何時もの路地を通ってて……。

あ、そういえば派手に転んだような。

あ、そうか。転んだ時に頭からケガして、意識を失ったんだ。

病院にいるっていうことは、誰かが救急車を呼んでくれたんだな……。

人気のない路地なので、誰かに助けてもらえたのは不幸中の幸いだ。お礼を言わなきゃ。と、思った最中に。

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