「性差診断……異常?あれ?ベータとかオメガは??」
人間は、16歳を過ぎると男女から更に六つの性器が発育して完成する。
性器は生殖能力と同時に性格への影響もあり、高校生は全員、進学、就職前に検査を受けるよう国から義務づけられている。
豪星も、通例にのっとり16歳の春休み。「性差診断」の検査を病院で受けたのだが、一週間後に届いた通知をみるなり首をひねった。
血液型のように、AだのBだの書かれるはずの場所に、「異常あり」と書かれている。
豪星は、父親がアルファ、母親がオメガのミックスだが、アルファによくある活発な性格ではないから、てっきり、オメガ一択だと思っていたのだけれど。
……異常ってなに?
「……まあいいか」多分、検査中に手違いでも起きたのだろう。健康診断にも誤診はよくあると聞くし。
紙にも、要再検査と書かれているので、もう一度調べてもらい検査をしてもらおう。次回にはしっかり、自分の性別がわかるだろう。
そう、気軽にかまえていた豪星だったが――――半年後まで「異常」がつづくと、さすがに怖くなってきた。
なにこれ??
なんで、俺の性別はずっと異常なの??
豪星とて、なにも手を打っていない訳ではない。病院も変えたし、医者も変えた。けれど結果だけが変わらない。
豪星の性別はずっと「異常」のままだ。
震える手で「異常」と書かれた紙をなぞる豪星のひざ元で、そのときぶるぶると、携帯電話が振動した。あわてて着信先をみると、「公衆電話」の四文字がディスプレイされる。
豪星の電話に、公衆電話をかけてくる人物はひとりしかいない。
藁にもすがる気持ちで、豪星は携帯電話を耳におしあてた。
「もしもし!父さん!?」
『やっほー豪星くーん。ひさしぶりー。あのね、近々そっちに帰ろうかと』
「ねえ父さん!俺の性別がおかしいんだけど!?」
文字通り、久しぶりに聞く父親(蒸発中)の声をさえぎると、『え?なに?なんのこと??』突然のことに、相手が電話の向こうで声を白黒させる。
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