「猫先輩の話だよ。龍ちゃん」へんじが横やりに対して説明を施す。
「お前も聞いたことくらいないか?先天性異常による後天性性換発症ってやつ」けんじが、さらに補足する。
「なんだそれ?」龍児が首をかしげる。
「先天性異常による後天性性換発症っていうのはね、龍児くん。例えば元々男性だったひとが……」豪星が病状の説明をかみ砕いて加える。すると。
「へえ」龍児がやっと、一連の流れを飲み込んだ。そして言った。
「あいつが女になったら、かわいいだろうな」
「「「…………」」」
龍児が放った意外過ぎる言葉に、三人交互に顔を見合わせる。
「龍児……お前イケメン先輩のこと嫌いじゃなかったの?」
「嫌い」
「じゃあなんで龍ちゃん。猫先輩が女の子になったらかわいいと思うの?」
「俺があいつのこと嫌いなのと、あいつが女になったらかわいいことはいっしょなのか?」
「「…………」」双子が黙りこむ。短い言葉で論破されたようだ。
「あいつ、顔がきれいだから、女になったらかわいいだろ」
「龍児くん……猫汰さんに対してそんなこと思ってたんだね」
「あいつの顔きれいじゃないのか?」
「いや。綺麗だと思うよ。思うけどね」
龍児の中で、美醜の判別とそれが好意か嫌悪になるかどうかは全く関係しないんだな。
相変わらず動物みたいな男の子だ……。猫汰は、龍児のこういうところが嫌いなんだろう。逆もまたしかり。
それから、暫く「猫汰が女の子になったら」談義で盛り上がり、昼休みが終わると、後輩三人組は自分の教室へ帰って行った。
そして、次の日、また次の日も猫汰は学校へ戻らず、最近では、あれだけ頻繁にきていた電話もかかることがなくなっていた。
向こうでなにかあったんだろうか。
……大丈夫かなぁ、猫汰さん。
思ってもどうしようもない心配が、もくもくと胸の内にわだかまる。そんな状態のまま更に一週間が過ぎた金曜日。
学校から帰宅し、夕方を迎えた頃。
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