その場で話している内に出発の時間が迫り。近くで豪星と猫汰が会話しているのを見守っていた詩織が「そろそろいくよ、猫汰」時計を眺めながら出発を急かした。

「えええーーーー」猫汰が不満げな声を上げるも。

「猫汰。元々、豪星君に無理を言ってきてもらってるんだからね」と言われてしまえば、ぐうの音も出なくなったらしい。

しぶしぶ、兄の傍により始めた。

「じゃあねダーリン。俺ちょっと行ってくるけど、すぐ帰ってくるから!
俺がいない間に浮気しちゃだめだよ!」

「大丈夫です。する相手がいません」

「りゅーちゃんとかりゅーちゃんとか!」

「それこそ大丈夫です」

本格的に時間が迫り、最終的には詩織が引きずるような形で猫汰を連れて行った。

引きずられていった猫汰は、最後の最後まで、「すぐ戻ってくるからねーーーー!」豪星に手を振っていた。

そして、詩織と猫汰は改札を通り、駅のホームへ続く階段へと消えていった。



猫汰が都会の病院へ向かってから、一週間後。

昼休みになって、豪星の教室へ遊びに来ていたへんじ、けんじが、「最近猫先輩見かけないっすけど、なにかあったんすか?」と尋ねてきたので、状況を説明した。すると。

「……はー、猫先輩にそんなことがあったんすか」

「イケメン先輩が女の子にねー」

お互いが不思議そうに顔を見合わせ、息を吐くようにつぶやいた。

ちなみに龍児も隣にいるが、こっちは聞いているのかどうかも分からないほど真剣にお弁当を食べている。

「今は都会の病院へ移ってて、色々検査したり、担当の先生と今後のことを相談してるんだって」

「へええ。あの病気って、俺、都市伝説かと思ってましたよ」

「うん。俺もそう思ってた。けど、ほんとにあるみたいだよ。猫汰さん、見て分かるくらい身体が変化してたから」

「へええ。そうなんすね。見てみたいようなそうでもないような」

「なんのはなしをしてるんだ?」

お弁当を食べつくしたらしい龍児が、やっとこちらの話題に興味を持ったらしく、三人の話題に乗りかかってきた。

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