『今日、おっきい病院行ってきたんだけどね。そこの先生でも判断が難しいって話になって、もっと都会の、専門の研究してる先生がいるところに行ってもらわないといけないって話になって。来週そっちに行くことになったんだー』
「そうですか。大変ですね」
『大変なのは別に良いんだけどさ、会いたいなぁダーリンに。もうずっと顔見てないし。
詩織ちゃんに、ちょっとだけダーリンに会いに行っていい?ってお願いしてるんだけど、今はそれどころじゃないからダメって怒られるの』
「まあ、そうでしょうね」
『ねーダーリン。わがまま言っていい?』
「なんでしょう?」
『俺、今週の日曜日の朝7時45分に新幹線に乗るの。その時、俺の見送りに来て』
「いいですよ。7時45分発ですね?その15分前に改札口の近くに行けばいいですか?」
『うん!ありがと!』
豪星の了承に気を持ち直したのか、しぼんでいた猫汰の声に張りが戻る。
そのあと、猫汰はしきりに会いたいねぇ日曜日が楽しみだねぇと弾んだ声で繰り返し、満足したところで通話を切った。
そして、来る日曜日。
豪星は約束の7時30分前に、新幹線の改札口付近に向かうと、時計を見ながら猫汰の姿を探した。
そして数分後。「……あ!ダーリン!」猫汰の声が少し遠くから聞こえてきた。どうやら、向こうの方が先に見つけてくれたらしい。
「ねこたさ……」相手に振り返ると、ちょうど、向こうも駆け寄ってくるところだった。背後には彼の兄も付き添っている。
「こら。猫汰。走っちゃだめだって言っただろう」
「だいじょうぶだってば。心配しすぎだよ詩織ちゃん。
わーいダーリン!うれしい!来てくれてありがとう!」
「いえ。このくらいでしたら」
「やさしいー」
猫汰が満面の笑みを浮かべる最中。豪星は「猫汰さん、また小さくなったか……?」と、相手の変化を感じ取っていた。
よく見ると、彼が着ている服が、彼の今のサイズに合わずだぶついている。
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