あれかな。龍児と俺たちだと味覚の許容範囲が違うのかな。と、ひそひそ話し合う双子の隣で、いや、違うだろうなと豪星は思う。
「りゅーちゃんって単純な味が好きそうだから、そういう料理ばっかりつめてみたんだけど、口に合ってよかったー!」
やっぱり。今日ははりきってない弁当だった。
いきなり渡された弁当におびえていた龍児だったが、思いのほか中身が美味しかったらしく、そのままもぐもぐとハシを進め始めた。
その隣で、猫汰がしきりに「りゅーちゃんおいしい?」と聞きながら「ところで、どのおかずが一番美味しい?」「これ豚のロース使ってるんだけど、どう?」「りゅーちゃんは豚と鶏どっちのほうが好き?」「一応魚も入れてみたんだけど、やっぱり肉派?」「野菜はどのくらいの割合で入ってるのが好き?」「あ、ちょっとへんじ君とくっついてみてくれる?」など、質問と要望攻めにしている。それを聞きながら……資料集めに熱が入ってるなと、明後日の方を振り向く。
その時。
「神崎くんのお弁当、あいかわらずすごいねー」
それまで、窓際で友人と弁当を食べていた一蔵楓花が、豪星たちの机に近づいてきた。よく見ると、その手に、綺麗に包装された大き目の袋を掴んでいる。
「あれ?一蔵先輩」いちはやくけんじが反応する。
「こんにちわ。けんじ君」一蔵楓花が親し気に返事をした。どうやら面識があるようだ。
「けんじ君。これどうぞ。たくさん入ってるからみんなで食べて」
「え?」突然、一蔵楓花が持っていた袋を渡され、けんじが顔中に疑問を浮かべた。
「なんすか?一蔵先輩。とつぜん」
「うん。賄賂?」
賄賂て……一蔵さん。そのまますぎるよ。もうちょっと言葉選ぼうよ。
事情を知っている豪星は片手で顔を覆うも、けんじは相変わらずきょとんとしたままだ。
それ以上とくに説明しないまま、一蔵楓花は袋だけをけんじに渡すと、再び友人の輪に戻っていった。
けんじが、渡されたばかりの袋を開封し、中身を覗く。
「クッキーだ……手作りっぽい」
中身を述べたけんじが、それを机の上に置いて、見やすい形に包装を変形させる。
豪星も袋の中身を覗くと、たしかに、色々な形の素朴なクッキーがたっぷりと詰められていた。
「わー、おいしそー」真っ先に猫汰が手を伸ばし、クッキーをひとつ掴んで口にいれる。
「おいしい!ふーかちゃんお菓子つくるの上手だね!」猫汰が手放しで褒めるので、さぞ美味いのだろうと、豪星も遠慮なくひとつもらう。
「あ、ほんとだおいしい」バターがたっぷりきいていて、ちょっとしっとりしてて美味しい。
「へー!どれどれ!」続いてへんじがクッキーを掴んで、「うまい!」豪星と同じ感想をこぼす。
その内龍児もクッキーを両手に掴んでざくざくとほおばり始めた。甘いものが口にあってとても幸せ。という顔をしている。
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