上級生の教室に双子が紛れ込み、豪星と猫汰の机に近寄ってきた。その後ろにくっつく形でついてきた龍児を、猫汰が見かけるなり。

「あ!りゅーちゃんいらっしゃーい!」

満面の笑みで、猫汰が龍児に手を振った。

途端。龍児がびくっっっ!と震える。それに構わず、猫汰が龍児を手招いた。

龍児は数秒ほど、なにがどうしたんだ?みたいな顔でうろたえていたが、やがて探るような顔で猫汰のそばに来ると、「ここ、座ってすわって」隣に座るよううながされ、大人しくそこに腰をつけた。

「ねえりゅーちゃん」椅子に座った龍児の目の前に、猫汰が今朝の弁当を取り出して置く。

「俺ね、りゅーちゃんにお弁当作ったの。食べてくれる?」

龍児の肩がますます震えた。

事の成り行きを見ていた双子も、あぜんと二人を見比べている。

豪星と言えば……無心になる準備をしていた。

「ねえりゅーちゃん。おべんとう食べて?」

猫汰が甘い声で龍児に弁当を開けるよう促す。

龍児が余計にうろたえて、そのまま豪星の方を見た。豪星といえば、微妙な顔で微笑んだ。

豪星の微笑みの意図が分からなかったのだろう。ますますおろおろして、龍児は次に双子を見た。双子はお互いの顔を見合わせてから、「……開けてみたら?」とりあえず、実動を提案した。

「…………」龍児が、恐る恐る弁当の包みを開き、上蓋を開けた。

弁当の中身は男好きしそうなおかずがたくさんつめられており、それでいて彩りはしっかり保たれていた。

美味しそうな弁当を目の当たりにして、龍児のうろたえる気配がますます濃くなる。

「たべてー、りゅーちゃん」

「…………」

「……食べてみたら?」双子のどちらかが、再び龍児に行動を促す。それを聞くなり、龍児が箸をとって……弁当をひとくち。

「うまい」思わずこぼれた。と言わんばかりの一言に。「ほんとー!よかったー!」猫汰が嬉しそうな声を上げる。

「あれ?猫先輩の料理美味しいの?龍ちゃん」

「うん。うまい」

「俺たちが食った時はすごい味がしたんだけどな……」

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