「小説は一時期趣味で書いてたんだけど、こんなところで役に立つなんて思わなかったよねー」
「……そういえばそうでしたね」
たしか、ハロウィンを題材にした俺と彼氏の恋愛小説を読まされる。という貴重な体験を過去にしたことを思い出した。
あの時も結構複雑な心境になったものだが、今の比ではないよね。
というか。そうかさっきめっちゃ龍児について聞かれたのは、小説の資料集めだったんだな……。
可愛い友達に魔の手が降りかかってしまい、なんだかな……と思っている豪星の隣で、猫汰が「さあ!もうちょっとがんばろうかな!」やる気に満ちた顔で再びパソコンに向かい合った。
ああ……彼氏との温度差を感じる……。
「ダーリン先にお風呂はいっちゃってー」
「了解です……」
複雑な心境になるも、だからといってなにがどう出来るわけでもない豪星は、猫汰に言われた通りすごすご浴室へ歩き去っていった。
そして次の日。
猫汰の部屋で目が覚めると、いつも通り猫汰が先に起きていて洗い物をしていた。お弁当を作り終えた片付けをしているのだろう。
豪星もソファからごそごそと起きだして、傍らに置いてあった制服に着替え始めるその途中。
「あれ?」リビングの机の上にいつにないものを見つけて頓狂な声が出た。
いつもならば豪星と猫汰の分で揃えられている弁当が、今日に限って三つ並んでいたのだ。二つは通常通りだとして、もう一つは一体誰の分だろう?
洗い物を終えた猫汰が豪星の方に近づき、すぐ、豪星の視線の先に気づいたらしく。「ああ、それねー」にこにこ笑顔で補足してくれた。「りゅーちゃんの分なの」
「龍児くんの分……」昨日同様、嫌な予感がする……。
猫汰はそれ以上説明しないまま、弁当を三つ、鞄に入れて持ち上げた。
二人で登校する最中、弁当の鞄が重そうだったので豪星が代わりに持ち、学校につくと、猫汰の指示で、弁当は教室の適当な場所に安置された。
それからしばらくて。昼休憩になると。
「「どーもどーもせんぱーい!いっしょにメシくいましょー!」」
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