「須藤くんが夏頃、中嶋くんの彼氏になるって言いだしたことがあったじゃない?あれはあくまで、神崎くんと須藤くんが同じ男性の立場で、須藤くんがより中嶋くんに近づきたいがゆえに出てきた言葉だったと思うの。
でもね、いま、神崎くんは女の子なわけ。それを中嶋くんも受け入れていて、それが須藤くんの目にごく自然に映ったんじゃないかしら。二人の仲をあんまり邪魔しちゃいけないなって、彼、ちょっと引いてる感じがするのよ」

「……それが本当だとしたら、俺、めっちゃうれしいけどね」

あの邪魔虫に、知らない内に愛しい男との彼女認定をさらっと受けたというわけだ。これほど小気味いいこともない。女になったかいがあったというものだ。

「まあけど仮定の話よ。彼の真意は彼にしか分からないわ。
けど、この仮定がもし事実だと考えた時。ここでとある可能性が浮上するのね」

「さっきから、なんなの可能性って?」

そこで、一度一蔵楓花は言葉を切ると。ふうと息を吐いてから。

エサを狙う動物のような目で言った。

「いっかいあれだけ男に執着したんだから、性癖が変化してて、次も男に走る可能性があると思わない?」

「…………」

「もしその可能性があるとしたら、須藤くん大好きなあの双子がおあつらえ向きだと思わない?」

「………双子はノンケだと思うんだけど」

「そんなことないわ。私、けんじ君と体育祭の時同じ委員会だったから、その時の交流でちょっと伝手があるのだけれど、龍児ってかっこいいから、たまにこいつになら抱かれてもいいわー!って思うし、兄貴も同じこと言っててさー。
なんて言うのよ彼。
絶対に絶対その気がなかったら言わない台詞よ。しかも双子で同調してるのよ。
そもそも、中嶋くんと神崎くんがホモだった時に、須藤くん以外で最も近くにいた他人はあの双子よ。
感化されててもおかしくないわ」

「………なるほど。絶対とは言わないけどなくはないね?」

「でしょう。だから、可能性があったらどっちと付き合うのかしらって、他でもないあなたに聞きたいのよ」

一蔵楓花の話に、納得して、吟味して、出た結論と言えば。

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