「本当にダーリンと生物のせんせいがセックスして欲しいんじゃないの。ただ、その、趣味の範囲でね?こういうの最高にたのし……好奇心がわいちゃったっていうかね?
えっと、その。前だったら、ダーリンが他の男と寝るなんて絶対無理だと思ってたんだけど、こうして空想にしてかつ面白い展開で持ってこられると別腹だったっていうか、でもなんか俺の後付けな女の子の心が揺り動かされてるからこそ起きてる現象な気がするっていうか、つまり、えっと……女性ホルモンかな?」

「……いえ、あの」俺が聞きたいのは、俺と生物教師がセックスになだれ込むことの事実でもなく、猫汰さんの女性ホルモンの変化でもなく。

なんでこんな本が存在しているかなんだけれど。

「えーと……これ書いたの、一蔵さんですか?」話の切り口を変えて尋ねると、途端。「ふーかちゃんを怒らないで!」猫汰が食いついた。半泣きだ。

「ふーかちゃんに無理を言って俺が借りたの!ふーかちゃんはわるくないの!」

「…………」つまり一蔵楓花がこれを書いた。ということで確定か。

などと考えている内に猫汰のスマホが鳴り響いた。

着信にいちはやく反応した猫汰が、スマホを手に取るなり。「あ、もしもし!?ふーかちゃん!?あの、たびかさねて言うけどごめんね!?」ぺこぺこ謝り倒し始めた。どうやら一蔵楓花が電話をかけなおしたらしい。

「え?うん。うんいるけど……ちょっとまってね」

謝り倒していた猫汰が、不意にこちらを振り向くと。耳にあてていたスマホを豪星に差し出してきた。

「ふーかちゃんが。ダーリンに代わってって」

「ああ……はい」電話を受け取り、耳に押し当て、すぐ。

「……あのー、一蔵さん。
一蔵さんが書いたらしい小説の中で、俺がすごい目にあってるんだけど」

『あちゃー。中嶋くん、やっぱり読んじゃったんだ?』

読んじゃいましたよ。好奇心丸出しで俺から手を出した訳だけど、中身がこれだと分かってたら読まなかったよ。

『ごめんねー、おどろかせちゃって』

電話口でかるーく謝る一蔵楓花いわく。

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