最後に謎の言葉を発してから、猫汰は半ば強引に通話を切った。そして、「どうぞ!」脇に抱えていた例の鞄を豪星に差し出してくる。

「ど、どうも」豪星はそれを受け取り、鞄の口を開いて中身を取り出した。そして、「あ、これ」思わず声が出る。

豪星が手に取ったのは、以前、猫汰が拾ったあの厚みの薄い本だった。

それも、鞄の中に何冊も入っている。デザインは多少違うが、どれも同じような雰囲気だ。

猫汰と一蔵楓花は、どうやらこれを貸し借りしていたらしい。豪星がずっと前に中身を覗いた時は、なにか文字が書いてあるな。くらいの認識しかなかったのだが。

これが一体猫汰と一蔵楓花のなにを結び付けたというのか……。

全く想像がつかない中身を確かめるため、豪星はソファに座って取り出したばかりの本を開いた。

すると、隣に猫汰が座って。豪星の腕にすがりつきながら「……あーあ。ふーかちゃん怒るってるよね。他の本これから貸してくれるかなぁ……」ひどく残念そうにつぶやいた。

豪星が本を開いてすぐ、目についたのは。

『中嶋豪星と生物教師の放課後』

「ん???」

あれ?なにこれ。

俺の名前が書いてあるんだけど??

不思議に思いつつ読み進めると。本に書かれた自分が豪星の知らないところでなにやら小説展開されていた。

内容といえば、猫汰と付き合っているごくごく平凡な一般生徒である豪星が(猫汰と付き合っている時点でごくごく一般的かといえばまったくそんなことはないような)、ある日数学教師に放課後、成績のことで呼び出され。

そのままなし崩しにセックスするという内容だ。

「……………………………」

全て読まない内に本を閉じた。そして、隣にいる猫汰に振り向く。

「ねこたさん。これはいったい」

「ち、ちがうの」豪星の質問に、猫汰が狼狽えながら弁解する。

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