「どうでした?」駆け寄ってたずねると、「うん。あのねぇ」猫汰が診断結果を話始めた。

「うちでは治療が出来ないので、大きい病院に紹介状を出しておきますって言われた」

「ああ……ですよね」

なにせ三万人に一人の発症率なのだ。町医者では治療が出来ないので、大きい病院へ移されるというのは納得のいく診断だ。

本日の診察代を払うと、豪星と猫汰は来た道を引き返す形で帰路についた。

その途中。ふと、隣を歩く猫汰の方を見た時。豪星はわずかな違和感に襲われた。

……猫汰さん、背が低くなってないか?

元々、豪星のほうが猫汰よりもわずかに背が高かったので、彼が自分よりも低く見えるのは普通のことだったのだが。

その、いつも見ていた彼の背丈が、もっと小さくなっているような気がしたのだ。

まさかこれも病気の影響か。と、猫汰の右耳のあたりを凝視していると。

「ねえ、ダーリン」突然振り向かれて目が合った。「どうしました?」

「あのね、俺の予想だと、この病気ってたぶん大きい病院に行っても、改善は出来ても治りはしないと思うんだ」

「えっ。あ、いや、そんな……」猫汰にしては悲観的な意見に、どう返事をしたら良い物かうろたえていると。

「あ、ごめんごめん。言い方が悪かったね。
ちがうの。病気が治らなくてどうしようって話がしたいんじゃなくって」猫汰が目の前で片手を振る。

「治らないなら治らないで、俺はその方向に頭を切り替えないといけないと思ったの。で、切り替えるにあたって、なにが一番重要かなって考えたら、それはダーリンのことだなって思って」

「おれですか?」

「うんそう」

はて。なにがどうして、猫汰の病気が治らないことに対し、俺が一番重要なのか。まったく見当がつかないでいると。

「ねえダーリン」もう一度猫汰に呼ばれた。腕組み付きで。

「俺が女の子になっても、ダーリンのお嫁さんにしてね?」



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