「猫汰さんって一蔵さんみたいな女の子が好きなんですね」

「ち、ちがう!ちがうから!」猫汰がうろたえつつ、豪星にしがみついてくる。その顔を見下ろしながら、だろうなと思う。

彼は俺に一途だ。そんなことは豪星が一番よく分かっている。

あえてそこを利用しているのだ。つくづく俺も性が悪い。

「だって猫汰さん。今は女性ですけどそもそも男性じゃないですか。別にいつ心がそっちに変わってもおかしくないっていうか……」

「なにいってんの!?俺がダーリンしか目に入ってないの分かってるでしょ!?」

「でも最近、猫汰さん一蔵さんとよく一緒にいるし。彼女からなにかもらってるじゃないですか。なにあれ?プレゼント?」

「ちがうから!」

「じゃあ見せてよ」

「うっ……」

「見せてくれたら信じるから」

「うう…………っ」

豪星の質問攻めに、猫汰はものすごく迷いに迷った顔をして。そして。数分後。

突然スマホを取り出したかと思えば、驚く豪星の目の前で誰かに電話をかけ始めた。

「ねこたさ……!」豪星が声をかける寸前。

「……あ!もしもし!?ふーかちゃん!?」繋がった電話の向こうにいる誰かの名前を叫んだ。

その名前が一瞬変換できなくて、あぜんとするも。すぐ、それが「一蔵楓花」だと気づく。番号まで交換していたのか。

「あのねふーかちゃん!ごめんね!」猫汰は相手が通話に出るなり、突然謝った。返答の内容は分からないが、漏れてくる音の気配で、相手が驚いているのが分かる。

「あのね!彼氏にふーかちゃんとの浮気疑われちゃってね!なかなか信じてもらえなくって……浮気してない証拠にあれ見せろって今迫られちゃって!だからその!あれ見せちゃうね!」

『ええっ!?神崎くん!?』今度はしっかりと通話の声が聞こえた。大声で叫んだのだろう。

それに構わず、猫汰は再び「ごめんねふーかちゃん!」同じように叫んで謝った。

「明日俺なぐっても良いしこれもネタにして良いから!ほんとごめん!」

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