なぜ二人は楽しそうなのか。猫汰が一蔵楓花に渡されるあのあの鞄はなんなのか。
謎が謎を呼んで、さらに謎が大きくなっていく。
まさか、猫汰が一蔵楓花のことを好きになり、その上彼女からプレゼントを受け取っているとか?
とも考えたが。一蔵楓花と接近している。という以外は相変わらず豪星にべったりで、豪星に愛を語り続ける猫汰の様子に、それはないかと思った。
だとしたらなぜ。
猫汰と一蔵楓花は接触しているのだろう。
謎の鍵は――――あの鞄か。
猫汰のマンションに遊びに行くなり、豪星はちらりと、リビングの片隅に置かれたあの鞄を見た。
あの中に、豪星が気になってやまない答えが入っている。そんな気がしてならない。
豪星は、リビングのソファに座って思案し。しばらくして顔をあげると。「そういえば猫汰さん」のんびりと言った。
「あの鞄、最近よく見かけますね?なにが入ってるんですか?見てもいいですか?」
中身が見たいというごまかしようのない事実を隠してもしょうがあるまい。
ここは直球で頼んでみよう。そう思って、頼むついでにその鞄に手を伸ばそうとしたら――――。
「あ!それだめ!」猫汰にばっ!と、カバンを先に奪われてしまった。
突然のことにびっくりして、彼の顔を変な恰好で見上げていると。なにやらバツが悪そうに目をそらされた。
「こ、これはその……借り物だから……とにかくダメなの!ダーリンは見ちゃダメ!」
「…………そうですか」
いつもならば、ダメな理由はきちんと詳細に説明する彼が、なんの訳もなく拒絶している。
怪しい。
あの鞄になにが入っているんだ。気になる。どうしても気になる。
好奇心がますます刺激され、「…… 一蔵さんと最近仲がいいんですね」とうとう、豪星は奥の手に出た。
「えっ」猫汰が、あからさまに身をすくめる。
「その鞄も、一蔵さんから借りたんでしょう?俺、知ってますよ」
「そ、それは……っ」
29>>
<<
top