そういえば、後輩が帰っていく時はいつも悪態のひとつを飛ばすのに、今日は大人しかったような……。
「猫汰さん?どうしました?」
体調でも悪くなったのかと、相手の顔を覗き込もうしたら。
「……ダーリン。今俺の顔見ないで」
「え?なんで?」
「いや、ちょっと……いいから見ないで」
猫汰が、必死に自分の顔を両手でふさぎ、隠そうとする。……よくみるとその顔が、目元まで真っ赤に染め上がっていた。
「…………」耳まで赤くなっているのに気づいていないらしい。なぜ彼がこんな状態になっているかを疑問に思い、考え、そして。
「……ふーん」答えにたどり着いたとき、ちょっと不機嫌な声が出た。
豪星の声色に気づいたらしい猫汰の肩が、びくっと震える。
「猫汰さんこそ、龍児くんと浮気しないでくださいね」
「しない!しないよ!!するわけねーだろ!!」
必死に否定してるけど、顔が赤いままだと説得力がないですよ、猫汰さん。
*
猫汰は、性別と制服が入れ替わった。以外はほぼ何事もなく復学し、また豪星と共に高校生活を満喫するようになった。
仮にも、体質が一変するほどの重い病気だったわけだが、それにかかった本人がけろっとしていたおかげで、精神的な落ち込みもなく、順調に、状況も体調も回復していった。
かと思いきや。
しばらくすると、彼の身体に「問題」の異変が訪れた。
それは、順調に変化、回復したがゆえに起こった問題。とも言えたかもしれない。
――――それを現在、猫汰のマンションにいる豪星は目の当たりに。いや、「八つ当たり」されていた。
その「問題かつ八つ当たり」が何かと言えば。
「おなかいたいよぉおおおお、いたぃいいいいいいっ」
「だ、大丈夫ですか?」
「ぐぅうう生理しんどぉおお」
そう。女性の生理現象。略して生理だ。
猫汰が担当医に聞いた話では、女性体への変質が完全になされると、身体が妊娠できるよう生理が訪れるらしいのだが。
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