そういえば、後輩が帰っていく時はいつも悪態のひとつを飛ばすのに、今日は大人しかったような……。

「猫汰さん?どうしました?」

体調でも悪くなったのかと、相手の顔を覗き込もうしたら。

「……ダーリン。今俺の顔見ないで」

「え?なんで?」

「いや、ちょっと……いいから見ないで」

猫汰が、必死に自分の顔を両手でふさぎ、隠そうとする。……よくみるとその顔が、目元まで真っ赤に染め上がっていた。

「…………」耳まで赤くなっているのに気づいていないらしい。なぜ彼がこんな状態になっているかを疑問に思い、考え、そして。

「……ふーん」答えにたどり着いたとき、ちょっと不機嫌な声が出た。

豪星の声色に気づいたらしい猫汰の肩が、びくっと震える。

「猫汰さんこそ、龍児くんと浮気しないでくださいね」

「しない!しないよ!!するわけねーだろ!!」

必死に否定してるけど、顔が赤いままだと説得力がないですよ、猫汰さん。



猫汰は、性別と制服が入れ替わった。以外はほぼ何事もなく復学し、また豪星と共に高校生活を満喫するようになった。

仮にも、体質が一変するほどの重い病気だったわけだが、それにかかった本人がけろっとしていたおかげで、精神的な落ち込みもなく、順調に、状況も体調も回復していった。

かと思いきや。

しばらくすると、彼の身体に「問題」の異変が訪れた。

それは、順調に変化、回復したがゆえに起こった問題。とも言えたかもしれない。

――――それを現在、猫汰のマンションにいる豪星は目の当たりに。いや、「八つ当たり」されていた。

その「問題かつ八つ当たり」が何かと言えば。

「おなかいたいよぉおおおお、いたぃいいいいいいっ」

「だ、大丈夫ですか?」

「ぐぅうう生理しんどぉおお」

そう。女性の生理現象。略して生理だ。

猫汰が担当医に聞いた話では、女性体への変質が完全になされると、身体が妊娠できるよう生理が訪れるらしいのだが。

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