「おう」
「お説教って……龍児くんなにかやっちゃったの?」
「いやーこいつ、この前のテストの成績が良くなくって……」
双子と話し合っている内に、「ごうせー」嬉しそうな声で龍児がこちらに駆け寄ってくる。その間に、「ちっ!!」猫汰がいまいましそうに舌打ちした。この辺も女性になっても変わらないんだな。この流れだとまた、猫汰と龍児が衝突して……。
かと思いきや。
猫汰に気づいた龍児が、猫汰の目の前でぴたりと立ち止まり、上から下までじっくりと眺め始めた。
「なんだよりゅーちゃん。じろじろ見やがって」猫汰が不機嫌な声で相手を責めると。
「おう」龍児が小さくうなずいて。「かわいいなっておもって」ストレートに表現した。
「…………っ」猫汰が珍しくも絶句し。
「「お、おおー……直球!」」龍児の傍らで、双子が感嘆の声を上げる。
「すげー。龍児の直球ってこういうところにも出るんだ」
「中々言えないよね今の」
「なんのはなしだ?」
「いやいや。うん。いいんだよ。龍児は龍児だなって」
「そうそう。俺たち龍ちゃんのそういうところ好きだよ。
……あ、やべっ、チャイム鳴っちゃった」
話し込んでいる内に昼休憩を終える音楽が教室中に鳴り響いた。
ここから教室が遠い後輩たちは、急いで廊下に向かうと、一度振り返って、「それじゃ先輩たち!またねー!」こちらに手を振り、扉を閉めた。
「ばいばーい」聞こえてるかどうか分からないが、一応豪星も手を振り返して、から。「あ、そうだ猫汰さん。次の授業なんですけど……」前回の授業で分からないことがあったから、休憩中に聞いておこうとしていたのを思い出した。
猫汰はしばらく休学していたので授業に遅れてはいるが、「俺、高校生の勉強はもう全部出来る」と言っていたし実際に豪星の勉強を全部見てくれているのは彼なので、ブランクは関係なく、また勉強も見てもらえるだろう……なんて、考えていた時。
「あれ?猫汰さん?」猫汰の様子がなにやらおかしいことに気づいて首を傾げた。
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