「そこまでされたら手ぇ出せよ!童貞くさいなー!」

大声で笑うので、「うるせぇ!」こちらに向いた尻を蹴とばした。

「いたい!」とうなる父親を無視して、豪星は立ち上がった。

「どこいくの?」と聞かれたので。「どこでもいいだろ!」怒鳴って、から、……トイレに入った。

その際。「ははっ、わかいねー」と、苦笑する父親のつぶやきが聞こえた。



猫汰が学校に復帰を果たしたのは、彼が発病してから3か月後、冬が極まる12月初頭のことだった。

すっかり小さくなり、そのくせ出るところは出てしまった猫汰は、それまで着用していた男子制服を止め、女子制服をまとって登校してきた。

ちなみにその制服は、あらかじめ猫汰がマンションで着用したものを、「みてみてー、おれかわいい?にあう?」と、豪星に10回ほどお披露目してくれているので、豪星にとってはもう見慣れたものだ。

猫汰が登校してくると、学校中にゆれる気配があった。

もとより目立つ人だった上に、「彼が例の病気になった」という噂も出回っていて、しかも張本人が帰ってきたとなれば校舎中がざわつくのも仕方のないことだろう。

だが、その好奇心の的になっている本人と言えば。

「女子になってから思ったけど、女の子って男よりごはんが入らないんだよねー」

手作り弁当をむしゃむしゃ食べながらどこ吹く風だ。こういうところさすがだなぁと思う。

ちなみに今は昼休憩なので。

「「あーーーーーーーーー!!ほんとに猫(イケメン)先輩女の子になってるーーー!」」

当然のように、猫汰帰還の噂を聞きつけてきた双子後輩が教室に飛び込んで来た。

「あ?なんだ双子じゃねーか」弁当を食べる手をとめて、猫汰が顔を上げる。

その隣を、適当な椅子を借りた双子たちが陣取った。

「すげー!先輩美少女じゃん!」

「ほんとほんと!ちょっとそこらへんにいないくらい可愛いっすね!」

「でしょー?おれ、かわいいよねー?」

後輩の囃し立てを、当然のように猫汰が受け止める。うーん。このへん、女性になっても変わらないんだな。

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