「じゃあ……俺たち、もうしちゃおっか?」
「えっ!」
「身体はもう大丈夫だから。ね?ダーリン」
「……、………」
「おれのはじめて、もらって?」
そう言って、猫汰が豪星の腰をなでてくる。
一瞬、頭が真っ白になって、彼に覆いかぶさろうとした――――のをギリギリ抑えて、「すみません!!」ベッドから無理やり立ち上がる。
「うわ!」豪星が立ち上がった勢いに巻き込まれ、猫汰もベッドから落ちそうになる。が、それに構わず。近くに置いてあった自分の鞄を掴んだ。
「俺もう帰ります!!」
「ええ!?ダーリン!いま2時だよ!?」
「帰ります!」
「ちょ……ダーリン!」
制止の言葉を振り切って、猫汰の部屋を飛び出すと。後ろから。「ばかーー!いくじなしーー!」彼の怒声が聞こえた。
構わずマンションから逃げ出して、豪星は真っ暗な夜の中を走り抜けた。
そして。自分のうちに着くなり。荒い手つきで鍵を開け、入り。「あーーーーーーーーー!」叫ぶ。
「うぉっ!?なになに!?」中で寝ていた父親が、豪星の叫びに飛び起きる。
「あれ!?豪星くん!?どーしたのこんな夜中に。猫ちゃんちに泊まってくるんじゃなかったの!?」
「うるっさいな!それどころじゃなかったんだよ!」
乱暴な足取りで部屋の中に入ると、父親のしいた布団の傍にどすっ!と座り込んで、もう一度「あーーーーーーーーーーーーー!」叫ぶ。
隣から壁をどん!と叩かれたが、恐縮する余裕が今の豪星にはなかった。
「くっそ!なんだよあれ!」
「なんかあったの?」
「なにもくそもあるか!」
苛立ちに交じった欲望を発散させるがごとく、豪星はさきほどあったことを父親にぶちまけた。
言えば少しはスッキリするかと思ってのことだったが。逆に思い出してしまい、怒りは紛れたものの却って悶々とした気持ちだけが残る始末だった。
豪星の事情を聞き終えた父親と言えば。
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