お風呂に入ってる間にこんなに簡単に蒸しパン作れちゃうなんて、すごいなーさすが猫汰さん。

と、彼氏の料理の腕前を掌返して褒め称えている最中。浴室から猫汰が出て来る音が聞こえた。

リビングの扉が開く音がしたところで。

「あ、猫汰さん。蒸しパンおいしいで――――――」

絶句する。

「ほんと?よかったー。ちょっと蒸す時間足りなかったかなー?って思ってたんだけど」

「…………」

「まだいるようなら言ってねー。冷蔵庫に入ってるから。レンジでチンすればすぐにたべられるよー」

「…………」

「どうしたのダーリン?」

「……いや……あの……えっと……」

豪星が、なぜ絶句しているかと言えば。

風呂から出てきた猫汰が下着のような恰好をしていたからだ。

太ももはほぼむき出しで、胸元など大きく開きすぎている。

猫汰こそ「そんな恰好で風邪ひかない?」状態だ。

いや、でも、ああいうのも女性にしたら、部屋着になるんだよね。

下着に見えてるのは自分がそういう目で見ちゃってるからだよね。

「いえ。なんでもないんです」邪な心を制して気を取り直すと、食べかけの蒸しパンをすべて腹に押し込んだ。

そして、しばらく猫汰とリビングで談笑し、「今日は泊って行ってね」と約束している通り、就寝のための準備に入った。

歯を磨いて、猫汰は自分の寝室へ、豪星は隣の部屋のベッドでかけ布団をかぶって。

そして、暗くなった天井をじっと見つめながら思う。

……これもよく考えたら、彼女の部屋に泊っているという状況なのか。

これも今更、「ものすごくいい状況にいるんじゃないの俺?」という自覚の芽生えた豪星は、また、ドキドキと後ろめたい鼓動に苛まれた。

壁一枚隔てた向こうに、下着みたいな恰好で眠る女の子がいるかと思うと余計に胸がうるさくて……ええいと、頭が振って煩悩をやり過ごした。

しばらく、目がさえて眠りづらかったが。

なんとか奮闘して、小一時間後には眠りが深くなってきた。

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