「でしょー?かわいいでしょー?」当の部屋主と言えば、「かわいい」と言われてご機嫌そうだった。

なんでも、彼いわく。「女性化してから趣味が変わった」らしい。

「多分ねー、女性ホルモンみたいなのが出てるんだろうね。男の時じゃ考えられなかった方向に趣味が変わり続けてる感じがする」

「そうなんですね……」妙な感心をしながら、豪星はいまいちど猫汰の部屋を見渡した。

以前まではなかったぬいぐるみや、ハート型のクッション。天井からはなにやら綺麗なモニュメントがぶら下がり、よくみると、家電なんかもやさしくかわいい色合いのものに挿げ替えられている。

なにかつけているのかたいているのか、どこから良い匂いまでしてきて。完全に、女子の部屋に成り代わっていた。

そこまで考えてから、ふと、……あ、俺。女の子の部屋に入るのって初めてだな。

そう思ったら。―――なにやらめちゃくちゃドキドキしてきた。

彼は、正確に言えば女性とはいいがたいし。そもそも通い慣れた部屋であることは変わりないのに。

なんだろう、この、迫りくる妙な気分は。

「おーい。ダーリン。なんで廊下に突っ立ってるのー?リビングおいでよー」

猫汰がひょいと、こちらを伺ってくる。

「あ、すみません」豪星は慌てて振り返って、リビングの方に入ろうとした。その時。

またふと。……そういえば、もう、彼にダーリンと呼ばれても、なんらおかしなことはないんだなと思った。

そう思うと、また、胸がドキドキする。

ようするに、「彼氏が彼女になった」ということが、「俺に彼女が出来た」という事になることに、豪星は今やっと気づいたのだった。

しかも、人生はじめての彼女がこんなに綺麗だという。……しかも胸がFあるという。性格はまあさておき。

なにはともあれ。ジョーカー引いたかと思ったら逆転エースになったような、なんとも現金で、それがどこか後ろめたい気分になる。

ただ、「女になって嬉しいかも」と思ったことは本人に言わないでおこうと思った。仮にも病気の人を傷つけてしまう。

……というのもあるが、どちらかと言えば烈火のごとく怒られそうな気がしたからだ。

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