どういう状況だこれ。と、うろたえる豪星の目の前で、「豪星くんてば。美女にひっつかれて役得だねぇ」父親の冷やかしが入った。
じろりと睨んだが、からかうように目を細められた。
「でさあ。ねこちゃん。今どんな状態なの?」
大変デリケートな話題を、父親があっけらかんと相手に尋ねる。
「うん。あのねぇ、俺、もうほとんど女の子なんだぁ」
不躾な質問を、当事者が、同じくあっけらかんと受け応える。この空間にデリカシーは存在しないのか。
「えーと、具体的に説明するとね。
あ、ちょっとグロい話も入るから、苦手そうな話があったら耳塞いでてね、ダーリン」
「僕の心配はしてくれないんだ、ねこちゃん」
「おとーさまのメンタルがどうなったところで、俺、どうでもいいもーん」
「ですよねー」
「ええとね。まず、俺の先天性異常による後天性性換発症。長いから略して性換発症のことなんだけど、専門の先生が言うには、症状の潜伏期間が長かった所為で、症状の可視化が他の症例の6倍速かったんだって」
「ようるすに、ねこちゃんが女の子に見え始めるようになったスピードが、他の性換発症の人より早かったってことだね。普通はどれくらいかかるものなの?」
「完全に性別が変わるまで、普通は半年かかるらしいよ。ただ、俺の場合は6倍速なわけだから」
「一か月。ですね……」
「そう。まあそれも、さっきも言ったけど元々の潜伏期間が長かったからなんだって。普通は、段々見た目が顕著に変わっていって半年で性別が変わるところを、俺は見えにくい形で性別が変わり始めて、最後の6ヵ月目で、どーん!と変わった。って感じ。骨格だけは急に縮んでるみたいだから、節々が痛いんだよねぇ」
「なるほどねー。下も完全に女の子なの?」
「ちょ。父さん。セクハラ……」
「気にしないでダーリン。
えっとね、下はもともと、性器の中身が体の中に吸収される形で変化してたらしいんだけど、皮だけは残るらしいから、そこだけ手術して……」
うっ。俺ちょっとこの辺の話ダメかも。耳ふさごう……。
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