「扉開けてあげなよ。豪星くん」「わかってるよ」親子で応対しながら、豪星だけ立ち上がって玄関へ向かうと、「いらっしゃい、猫汰さん」扉を開ける。

そしてすぐ。「……え!ねこたさんっ!?」相手の姿に驚き、声を上げる。

驚かれた相手と言えば。

「じゃーーーーーーーん!」片手を顔の前にかざして、豪星の目の前でポーズをとった。

彼の身体が揺れると、彼が着ているワンピースの布地がはためく。

豪星は、猫汰の姿を上から下まで眺めてつばを飲んだ。

――――女の子になってる。

先日。新幹線の前で別れた時よりもはるかに。彼の性別は女性と化していた。

「どうしたのー?豪星くん」豪星の背後から、待ちかねた様子で、父親が外を覗いてくる。

そして、猫汰の姿を見るなり「おお!」歓声じみた声を上げる。

「ねこちゃん!すごいね!美少女になってる!」

「でしょでしょー!」

白い襟に、大きな水玉模様の水色ワンピースの裾を、ちょいと持ち上げながら、猫汰が堂々と、「俺、かわいいでしょ!」と答えた。

そして。ぽかんとしてしまった豪星の腕をぐいとひっぱり、抱き着いてくる。

「この恰好見せたくて、内緒にしてたんだよねー。おどろいた?おどろいたよね?
あーーーーーーーーーーー、それにしても、ダーリンの匂いだ。うれしいーーーーー!」

密着すると、彼にはえた胸が思い切り腕にあたった。あたったというか「むぎゅ」っと音がする。

比較対象が自分の中にないけど、それが大きいということだけは分かる。

豪星はますます混乱した。目の前にいるのは猫汰のはずだ。

形も声も覚えている彼の状態に類似している。

だが、全く同じではない。まったく同じだけれど、どれも規格が「女の子」になっている。

改めて思った。

……猫汰さんが女の子になっちゃった。

「そんなところで立ち話もなんだし」という、父親の鶴の一声で、ようやく豪星と猫汰は家の中へと入り込んだ。

猫汰といえば、よほど豪星と会えたのが嬉しかったのか、胸を豪星の腕に押し付けたままの状態で座っている。

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