対象になるのは主に、人間の刑法に触れた吸血鬼と、血を求め過ぎて殺人にまで手を伸ばした吸血鬼。まさに、今の自分だ。

どうしよう。どうしよう……!

「………うっ」

混乱を極める豪星のそばで、ひとのみじろぐ気配がする。ぱっと、相手の鼻に手を当て息を確認すると、てのひらにかすかな吐息を感じた。

良かった!死んでない!

倒れた相手を抱き起すと、豪星は急いで立ち上がり、まっすぐ、自宅へと駆け戻っていった。







「……あ、れ。ここどこ……?」

数時間後、ワンルームの真ん中に布団をしいて、そっと寝かせた相手がむくりと起き上り、不機嫌そうにあたりを見渡し始めた。

「よかった!気が付いたんですね!」部屋のすみで相手が起きるのを待っていた豪星は、よろこびいさんで相手にちかより、その手を取った。

「おれ、ひとから血をのむのって初めてで、加減も分からず飲みすぎちゃったんです。本当にすみませんでした!具合はいかがですか?なにか食べたいものとかあれば買ってきますけど」

「は?血?なに?」まくしたてる豪星に、相手はいぶかしげな目を向けるも、「……あれ。なんかさっき凄い目にあったような……」すぐ、前傾して考え込む。そして。

「あ、てめ!この変態! ……警察!」かっと目を見開くなり、スマホを取り出し電話を引き出した。人間の公的機関に助けを求めるつもりだ。

処罰の二文字が頭をよぎり、「や、やめて!」相手のスマホを取り上げる。

「ちょ!はなせよ!」

「ご、ごめんなさい!おねがいだから通報しないで!俺処罰されちゃう!」

「はあ!?いみわかんねぇんだけど!くっそ!だれかー! たすけて!変態につかまってますーー!」

「わあ!叫ばないで!ご近所さんに通報されちゃう!」

「そのために叫んでるんだよ!誰かーー!」

「おねがいやめてーー!」布団の上でもみあいながら、豪星は必死に相手の口をおさえにかかる。けれど、相手はしぶとく逃げ回り、「だれかー!」外に声が通るよう叫び続けた。

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