「だから、俺はお前じゃなくて、豪星を騙してきた。豪星が、自分の所為でお前の寿命をなくしてしまうことを、忘れてしまうようにした。今は俺の部屋で寝てるよ。指を鳴らせば起きるようにしてある。今日中にはお前のところへ返すから」

けど、その前にと、ジャックが前打ち、突然頭を下げられた。

「俺はどっちも助けられる騙しを思いつかなかった。豪星しか救えなかった。

豪星が泣くのが嫌だった。だから、お前には、豪星のために死んでほしいんだ。それを謝りに来た」

ごめんと、ジャックが頭を下げ続ける。それを見て、ようやく警戒が解けた。

「あたま上げてよ」

「……ん」

「謝らなくていいよ。俺、こんなことで絶対に別れたくなかったから、むしろそうしてくれてうれしい。ありがとう」

「……変わったやつだな」

「うん。よくいわれる。でも、吸血鬼の花嫁になるんだし、このくらいでなくちゃね?

それより、お前いいやつだね。ねえ、俺たち今度結婚するんだ。その時、お前も来てくれない?祝ってよ」

ジャックは、猫汰の誘いにびっくりした様子だったが、ふと口角をまげると。

「うん。ぜったいに行く」

柔らかくわらって、頷いた。







西日の光に起こされた。

「……うー」目をこすって身体を起こし、ぼんやり辺りを見渡すと、見慣れない部屋が目に入った。

あれ?ここどこだろう。

「ごうせー、起きたか?」部屋の向こう側から知った人の声がする。振り向くと、龍児がひょっこり顔をのぞかせて、から、こちらへ近寄ってきた。

目前までくると、ペットボトルのお茶を豪星に差し出してくる。

「あれ?龍児くん?……どうしてここに?」

いや、どうして俺がここに。というべきか?

「何言ってんだ、豪星」龍児が呆れた声を出す。

「昨日からうちに泊まりに来て、昼飯食ったら眠くなったとか言って昼寝してたんじゃないか」

「……あ!そうだった!」

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