「…………いかないでぇ………っ」













「やっぱり泣くんじゃないか」

とつぜん、暗闇が割れた。目の前には、遠ざかる猫汰ではなく、目前にせまった龍児の姿。

出来事を飲み込めず、目も口も開いたままになった豪星の顔を、そっと、龍児が両手でつかむ。

「―――いいか、豪星。お前は恋人が自分の所為で短命になることなんて知らなかった。お前はそんなこと知らないんだ。いいな?」

龍児の目が、オレンジ色に発光していた。







インターホンが鳴ったのは、飛び出して行った彼氏を3時間ほど捜索し、見つけられず帰宅してすぐのことだった。

「せーちゃん!?」すぐさま扉を開け放ち、彼氏の帰宅を確認しようとするが。

「こんにちは」そこにいたのは彼氏ではなく、見知らぬ男だった。背が高く、精悍な顔立ちで、目がオレンジ色に染まっている。

「お前……」誰だと言いかけて、ふと気づく。彼氏にはオレンジ色の目を持つ友達がいるのだ。

「ジャックオランタンだね」驚きをおさえてたずねると、「そうだ」察しの通り、ジャックランタンその人が頷いた。

怪物の彼氏が、唯一長く付き合っている怪物の友達。初めて見たけれど、彼氏と同じく、見た目はほとんど人間だ。

「なにか用?豪星くんなら出かけてるよ」

「豪星は俺のところにいるんだ」

「えっ?」切り返しに驚き、「あいつ、俺にお前を騙して欲しいって頼みに来たんだ」次の言葉に目を見開く。

「……せーちゃん、なんて?」

「自分の所為でお前の寿命がなくなることを泣いて説明してから、俺に、お前が豪星のことを忘れるよう、騙してくれって、言われた」

「なんてことを」血の気がひいてから、すぐ、身構える。「安心しろ」しかしジャックは首を振って、猫汰の警戒を否定した。

「そんなことしない。そんなことをしたらアイツ、もっと泣くから」

「…………」

39>>
<<
top