その場で泣いて、朝がくるまで泣いて。
朝日に照らされながら、ようやく涙をぬぐう。
気は済んだので、そろそろ彼氏を探しに行こう。
とりあえず、彼氏の行きそうな場所を当たってみようと思う。それでも見つからなければ、家に戻って、協会と彼の父親に連絡をとってみよう。
こんなこともあろうかと、番号はしっかりとってあるから。
「……さーて」
待っててね、せーちゃん。
*
混乱している所為か、辺りが真っ暗な所為か、方向感覚がおぼつかない。
目的の場所へ着いた頃には夜が明けていて、息を切らす豪星の上を、陽がてりはじめた。
扉の前で、ぜえぜえ息をくりかえしてから、インターホンを押すのもわすれて。
「龍児くん!」思い切り叫ぶ。
「りゅうじくん!開けて!龍児くん!」
どんどん扉を叩いていると、「豪星!?」部屋の住人、もとい龍児が扉を開けてくれた。驚きに満ちる彼に、前傾してすがりつく。
「ど、どうしたんだ豪星、こんな朝っぱらから、なんで泣いてるんだ」
「だまして欲しい人がいるんだ!お願いだから!」
前振りもなく叫ぶと、つかんだ肩がびくりと震えた。口を閉ざした相手が、じっと豪星を見下ろすなり、「なんでだ」ぴしゃりと言い放つ。
「訳を言え」
「お、おれが、俺が猫汰さんを、だから……俺たち別れないと、だから……っ」
「待て。落ち着け。内容がまったく分からない」
来い。と言った龍児が、半ば引きずる形で豪星を中へと入れる。ちょうど部屋の真ん中あたりに放り込まれると、龍児が対面に座り込んだ。
「もう一回。落ち着いて訳を言え。おまえが俺にひとを騙せだなんて、なにかあったんだろう」
「…………」
「お前の恋人がどうした。なんで別れるとか言うんだ」
「……俺が、猫汰さんを殺しちゃうんだ」
「なんで?」
「それは、」
落ち着いた。とは全く言えない状態で、それでも、豪星は説明をこころみた。龍児はとぎれとぎれの言葉を何度も問い返し、ときに驚きながら。
「……そうか」豪星の言葉が尽きるころ、静かに頷いた。
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