その場で泣いて、朝がくるまで泣いて。

朝日に照らされながら、ようやく涙をぬぐう。

気は済んだので、そろそろ彼氏を探しに行こう。

とりあえず、彼氏の行きそうな場所を当たってみようと思う。それでも見つからなければ、家に戻って、協会と彼の父親に連絡をとってみよう。

こんなこともあろうかと、番号はしっかりとってあるから。

「……さーて」

待っててね、せーちゃん。







混乱している所為か、辺りが真っ暗な所為か、方向感覚がおぼつかない。

目的の場所へ着いた頃には夜が明けていて、息を切らす豪星の上を、陽がてりはじめた。

扉の前で、ぜえぜえ息をくりかえしてから、インターホンを押すのもわすれて。

「龍児くん!」思い切り叫ぶ。

「りゅうじくん!開けて!龍児くん!」

どんどん扉を叩いていると、「豪星!?」部屋の住人、もとい龍児が扉を開けてくれた。驚きに満ちる彼に、前傾してすがりつく。

「ど、どうしたんだ豪星、こんな朝っぱらから、なんで泣いてるんだ」

「だまして欲しい人がいるんだ!お願いだから!」

前振りもなく叫ぶと、つかんだ肩がびくりと震えた。口を閉ざした相手が、じっと豪星を見下ろすなり、「なんでだ」ぴしゃりと言い放つ。

「訳を言え」

「お、おれが、俺が猫汰さんを、だから……俺たち別れないと、だから……っ」

「待て。落ち着け。内容がまったく分からない」

来い。と言った龍児が、半ば引きずる形で豪星を中へと入れる。ちょうど部屋の真ん中あたりに放り込まれると、龍児が対面に座り込んだ。

「もう一回。落ち着いて訳を言え。おまえが俺にひとを騙せだなんて、なにかあったんだろう」

「…………」

「お前の恋人がどうした。なんで別れるとか言うんだ」

「……俺が、猫汰さんを殺しちゃうんだ」

「なんで?」

「それは、」

落ち着いた。とは全く言えない状態で、それでも、豪星は説明をこころみた。龍児はとぎれとぎれの言葉を何度も問い返し、ときに驚きながら。

「……そうか」豪星の言葉が尽きるころ、静かに頷いた。

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