照れ隠しに話しまくる彼の耳元にキスをして「そうしましょう」ささやく。胸のあたりがしびれてたまらない。

「ちょ、せーちゃん!外だよ!」

「すみません。つい」ちょっとかじったので、口に彼の血がついた。ひとなめすると、うん。あいかわらずめっちゃ美味い。

「せーちゃん……さいきん、物怖じしなくなったよね」

「おかげさまで」

「ますます良い性格になってきたなぁ……まあいいけど」

挙式は、猫汰の兄の知り合いが経営するレストランでやること。招待するのは身内と少ない友人だけにすること。大学を卒業してから式をあげること。猫汰が「ジューンブライドは外せないよねー」と言うので、来年の6月に挙げることなど、話がとんとん決まっていく。

「せっかくなら、式でせーちゃんが正装してるところ見たいんだけど、そうすると、式に呼んだひとたちになんでコスプレ?って思われそうだよね。せーちゃんが吸血鬼だなんて、実兄にもばらしてないし」

「それじゃあ、はじめはタキシード着て、そのあと、俺は正装して、猫汰さんはなにかコスプレして、新郎新婦側の余興ってことにしましょう」

「それいいね!じゃあ俺、ウェディングドレスでもきよっかなー」

「いいですね。見てみたいです」

衣装を決めるかたわら、豪星の電話がなる。

「あ、父さんだ」久しぶりの連絡だ。といっても、三か月ぶりくらい。

父親は、なんの気が向いたのか、息子と数年会わないどころか住所すら持たない生活をしていたくせに、豪星に彼氏ができたころから携帯電話をもちはじめた。

しかも、3~4か月の頻度で豪星に会いにくるか、電話をかけるようにもなった。

遅まきの父性でも湧いたのだろうか。母性よりも、父性のほうが遅くでるって聞いたことあるし。まあ、かじっただけの知識だけど。

「もしもし?父さん?」

『やっほー豪星くん。ひさしぶりー』

あいかわらずへらへらした口調だ。猫汰と言えば、親子水入らずに気を使ってか、「俺はちょっと買い物に行ってくるね」と外出していった。

電話の向こうの人と二人きりで近況などを喋り合い、「そうそう。父さん。俺ね、猫汰さんと―――」式を挙げるんだと、言いかけてやめる。

『猫ちゃんがどうしたの?』

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