……あれ?学校って、好きな人いればめっちゃ楽しいとこじゃね?

「……高校……いや、大学だなこれは。まずは高校卒業認定取って、えーと、うちから通いやすい大学はっと……」

「猫汰さん?どうされました?」

「ねえせーちゃん。吸血鬼の協会に連絡して、今からでも大学って行けるか確認してもらっていい?」

「え?どうしてですか?」

「どうしてって、学校行きたいって最近ずっと言ってるじゃない。

なんか、俺も行きたくなってきたから、いっしょに行こうよ。せーちゃんは協会の規定みたいなものがあるだろうから、そこをまず確認してくれる?」

願書を取り寄せる前にお願いね。と、念を押す猫汰に向かって、ぽかんとしていた彼氏がひとこと。

「――――おれ、学校いけるの!?」







初めて通う学校は、豪星の想像をはるかに越えるほど楽しい場所だった。

入学は、吸血鬼の事情から協会指定の大学に限られたが、それ以外は基本自由。

豪星は、かたわらに猫汰を連れ、おもいっきり、人間でいうところの「青春」というものを味わった。

講義に出て、人間のサークルにまじって、試験を受けて、友達を作って。

そのすぐそばに、いつも猫汰がいてくれた。

楽しいと笑えば、猫汰も笑ってくれる。

夢のような時間が数年もつづいた。

ずっと、のんびり過ごせばそれでいいと思っていた自分が、まわりに影響されて就職のことなど考えたりするようにもなった。

猫汰が、協会がいいよって言えば、兄の会社に就職しようよといってくれた。そうすれば一緒にいられるからと。

俺もそれは良い考えだと思った。猫汰と一緒にいられるのが、なによりもうれしいから。

「ねえ、せーちゃん」

大学4年生の秋。夕飯を買いに出かけた、ハロウィンが盛りの商店街。

「卒業したら、俺たち結婚しようか」

猫汰が、なんとなくのようにつぶやく。よくみると、かぼちゃの入った袋を持つ手が震えている。耳も赤い。

「っていっても、法律上認可はされないから、身内だけでこう、レストランでも借りて式だけあげてさ」

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