「え?ふたまた?」
「そいつと浮気してないだろうなって聞いてんの」
ずいと身を乗り出した猫汰が、豪星のひざに手をそえる。
おお。これはやきもちというやつかな。
初めてされたけど、案外気分がいいね。
けど、それは愚問というものだ。
「猫汰さん。俺、ジャックと浮気なんてしませんよ。友達はあくまで友達です」
「そんなの断言できないじゃん」
「できますよ?だって、ジャックに、俺が飲める血は流れてませんから」
そばにいて興奮するのは、今のところアナタだけですよ。
言い切ったとたん「うっ」猫汰の喉がひっくりかえった。
「……それを説得に使うのかよ」
「だめでした?」
「……ああいや。うん。分かった。めっちゃ説得されたわチクショウ」
なんだかなぁ。と、肩を落とした猫汰がヒザから離れる。そのさい、ひょいとかぼちゃを拾って、まな板の上に移動させた。
「それじゃあ、そのお友達からのかぼちゃ、料理しちゃうねー。煮つけで良い?」
「わーい。かぼちゃの煮つけ大好きです」
「……あ、その前に」ふと、猫汰が壁かけのカレンダーを見てつぶやき、ついでかぼちゃを手に取った。
しばらくして出来上がったのは。
「あ、ジャックオランタンだ!」むろん。龍児ではなく飾り用の。
「そろそろハロウィンだし、折角ジャックオランタン本人からもらったかぼちゃなんだから、晩まで飾っておこうよ」
「すごいすごい!猫汰さんあいかわらず器用ですね!」
「まーね」
出来上がったジャックオランタンを猫汰が窓際にかざると、豪星もそこに屈んで、友達の名前がついた飾りをにこにこ眺めはじめた。
その最中。
「ねぇせーちゃん。ハロウィンと言えばさ」
「はい?」
「俺たち、付き合ってそろそろ一年経つね」
言われてみれば、猫汰と出会ったのはちょうど去年のいまごろだ。
そっか。
もう、そんなに経つのか。
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