「これは吸血鬼の正装です」
「へえ!正装!そんなのあるんだ。ね、せーちゃん。あとで俺がキレイにしておくから、ちょっと中身を取り出してみてもいい?」
「いいですよ。どうぞ」快諾を貰ったので、さっそく、「吸血鬼の正装」とやらを開けてみると。
「おおお!すごい!」開けてびっくり。想像以上の以上に、吸血鬼っぽい服だった。
「ぼうしもあるんですよ。ほら、これ」
「え!見せて見せて!ていうか、ちょっと着てみてよ!せーちゃんがこれ着てるとこ見てみたい!」
「えっ、ちょっと恥ずかしいな……」ダサい服は恥ずかしくないのに正装は恥ずかしいとか、相変わらず彼氏の感性はちょっとずれてる。
それはさておき。
どうしても見たかったので、お願いおねがい!と、繰り返し頼み込むと、彼氏のほうがその内折れて、吸血鬼の正装に着替えてくれることになった。
着替え終わるのを、待つこと数分。
「おまたせしました」着替えた彼氏の姿を見るやいなや「わーーーーー!」歓喜の声が出た。
「かわいい!ちゃんとマントついてるし!これぞ吸血鬼って感じ!正装って、スーツと違って派手な洋装なんだね!よく似合うよせーちゃん!」
顔だちがはっきりしない人の方が派手な服の見栄えがする。の、理想論を地でいっている感じだ。
猫汰があまりに褒めるので、彼氏は照れ気味だったけれど、まんざらでもない様子だ。
「そういえばせーちゃん、この正装ってどんな時に着るの?」
正しい服装。と読むくらいだ。どこかで活躍するものなのだろう。
冠婚葬祭かな?
「これは、お葬式と結婚式と、あとは定例会で着るんです」
あ、やっぱり式で着るんだ。けど。「せーちゃん、定例会って?」こっちは聞いた事がない。
「定例会は、5年に一度、俺たち吸血鬼が現在どれだけ現存しているか、数を数えるために、協会が決めた会場に集まる会のことです。
日付と年数と会場は毎年変わりません。俺の父親みたいに、住所を持たない吸血鬼も、なるべく集まれる形になっているんです。
そこで、さっき言った通り、俺たちの数を数えるんですよ。
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