本人が気にしてないなら別にいいかと思ってたけど、最近目に着くようになってきた。
この際だからと指摘すれば、思いのほか、相手の顔があおざめる。
「ダサいですか……」
「うん。おしゃれのレベルが最高値5だとすると、レベル0からマイナス3くらいダサい」
「わあ……それすごくダサいってことですね」
「だって、今日着てるのも、とっても古臭い猫の絵がついたよれよれの服じゃない。それどこで買ったの?」
「えっと、服のお店に入るの苦手なので、激安のお店でいっきに買いました……」
「はあ?激安?そんなとこで買ったら、せーちゃんのまあまあ悪くない顔がいっきに悪くなるじゃない。顔が普通なんだからせめて服くらいしっかり選びなよ。その適当さは問題だよ」
「はい……」
まあ、本当に問題なのは、古臭いシャツを着てしゅんとうなだれた彼氏が、ダサ可愛く見えてしまう俺の目のほうだけどね。
それはさておき。
「春になってあったかくなったから、この際衣替えってことで、今までの服は片づけちゃおう。で、せーちゃんに似合いそうな服、俺がみつくろってあげる。おみせ、一緒に入れば怖くないでしょ?」
「わ、ほんとですか?うれしい。猫汰さんおしゃれだから、猫汰さんが選んでくれるなら間違いないですね」
「ふふん」好きな人からほめられると、まんざらでもないよね。
「それじゃあ、さっそく片づける服を集めちゃおうよ。クローゼット開けてくれる?」
「はい。分かりました」
狭いワンルームの、小さなクローゼットを開くと、プラスチックの安っぽい棚から、ひょいひょい、彼氏が服を取り出していく。
その背後から、猫汰も棚の中をのぞきこんだ。
「あ、それ。それも捨てちゃおう。そっちも。あれも」
「こんなに?」
「断捨離のコツは思い切りだよ」
ひとつ、またひとつ空っぽになっていく中、「あ、すみません。これだけは残しておいてください」ひとつだけ、丁寧に包装された包みを彼氏が指さした。
「せーちゃん。この服なあに?」
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