「おれたちは、寂しいけど同族は嫌いだから、時々誰かをだまして、誰かの子供になったり、兄弟になったりするんだ。
そういう方法を、俺たちは産まれたときから持っているから。俺の本当の親は悪魔をだましたから、俺が人間をだますのなんて簡単なんだ」
「俺のことはだまさなくてよかったの?」
「お前まざりだろ?まざりは騙したことがないから、勝手がよくわからなかったんだ。試す前に、友達になってくれたし」
ともだち、と口にした時、ジャックはくすぐったそうな顔をした。
「俺の騙りは、誰かがだました人に真実を言うと解けてしまうんだ。俺は今の父さんと母さんが好きで、なるべく一緒にいたい。まだ騙していたい。だから、お前が言わないって約束してくれてうれしい」
「そう」
「ううん。それよりも、騙らなくても良い友達になってくれたのが嬉しかった」
そう言って、龍児ははにかんだ。十歳の少年らしい微笑みだったけれど、彼はジャックだ。本当は十歳ではなく二十歳かもしれないし、それ以上なのかもしれない。
けれど、この寂しそうな微笑みだけは本当なんだろうなと、なんとなく思った。
*
せーちゃんとお付き合いを始めるようになって、半年くらい経った頃。
もう2月だな、まだ寒いなぁ、でもたまには窓をあけて空気をいれかえないと。そう思って、冷えた窓を開けた時。
「やっほー息子!元気だったー!」
一匹の猫がとびこんで、から、目の前で人に変わった。
めっちゃ悲鳴が出る。
「あれ?君だれ?ここ息子の部屋じゃなかったっけ?」猫、もとい人になった不法侵入者が、目の前でじろじろとこちらを観察し始めた。
口をぱくぱく開け閉めしてから、しばらくして混乱をおさえこむと、「そっちこそ、だれ」ようやく声を出した。
「僕?」問われた相手が、きょとんと顔をかたむける。
「僕はね、ここに住んでる男の子の父親なんだけど、やたらとイケメンで正体不明の君。どうしてここにいるのかな?あと、うちの息子がどこに行ったか知らない?」
ちちおや!?
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