「おれたちは、寂しいけど同族は嫌いだから、時々誰かをだまして、誰かの子供になったり、兄弟になったりするんだ。

そういう方法を、俺たちは産まれたときから持っているから。俺の本当の親は悪魔をだましたから、俺が人間をだますのなんて簡単なんだ」

「俺のことはだまさなくてよかったの?」

「お前まざりだろ?まざりは騙したことがないから、勝手がよくわからなかったんだ。試す前に、友達になってくれたし」

ともだち、と口にした時、ジャックはくすぐったそうな顔をした。

「俺の騙りは、誰かがだました人に真実を言うと解けてしまうんだ。俺は今の父さんと母さんが好きで、なるべく一緒にいたい。まだ騙していたい。だから、お前が言わないって約束してくれてうれしい」

「そう」

「ううん。それよりも、騙らなくても良い友達になってくれたのが嬉しかった」

そう言って、龍児ははにかんだ。十歳の少年らしい微笑みだったけれど、彼はジャックだ。本当は十歳ではなく二十歳かもしれないし、それ以上なのかもしれない。

けれど、この寂しそうな微笑みだけは本当なんだろうなと、なんとなく思った。





せーちゃんとお付き合いを始めるようになって、半年くらい経った頃。

もう2月だな、まだ寒いなぁ、でもたまには窓をあけて空気をいれかえないと。そう思って、冷えた窓を開けた時。

「やっほー息子!元気だったー!」

一匹の猫がとびこんで、から、目の前で人に変わった。

めっちゃ悲鳴が出る。

「あれ?君だれ?ここ息子の部屋じゃなかったっけ?」猫、もとい人になった不法侵入者が、目の前でじろじろとこちらを観察し始めた。

口をぱくぱく開け閉めしてから、しばらくして混乱をおさえこむと、「そっちこそ、だれ」ようやく声を出した。

「僕?」問われた相手が、きょとんと顔をかたむける。

「僕はね、ここに住んでる男の子の父親なんだけど、やたらとイケメンで正体不明の君。どうしてここにいるのかな?あと、うちの息子がどこに行ったか知らない?」

ちちおや!?

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