「今日はセックスします?」

「あっつ!」油が手元にとびはねた。

「大丈夫ですか!?」

「大丈夫じゃないよ!料理してるときにそういう質問いきなりしないでくれる!?」

こいつ、時々デリカシーないよね!

「す、すみません……するなら昼寝しておこうかなって、さっき思って、つい……」

つい聞くなよ。つい。

「……いや、今日はいいよ。血の気がないから体力もちそうにないし」

というよりは。

「せーちゃん、盛り上がってくるとまた飲みたがるでしょ……」

ヤりながら三回目を吸われるのはさすがに持たない。

げっそりしながら伝えると、彼氏がちょっと笑って。

「いつもごちそうさまです」

腹の立つ受け答えをしてきたので、すねを蹴り飛ばしておいた。





吸血鬼という生き物以上に、希少かつ稀な伝説生物(せいぶつ)がいる。それはジャックオランタンだ。

彼らと遭遇することは宝くじを当てることより難しいと言われているが、だからといって、「稀なのは知ってるけど、ジャックと会いたいかって言われれば、別にどうでもいいよね。宝くじあたった方がうれしいかな」というのが、ジャックオランタンを知っているものの総意である。

ジャックオランタン種の数がなぜ少なく、稀であるかには、ひとつ有名な説がある。

もともと、ジャックオランタンというのは人間であり、その人間が、生きている間に悪魔をだまし、自分が絶対に地獄へ落ちないよう契約したが、悪魔をだませるような悪人を天国が拒否したため、死後、どこにも行けず彷徨うようになった。

その、初代と言って差し支えないジャックオランタンの長が、地面を彷徨う間、ひまつぶしにメスをかどわかして、自分の子孫を残したのが、ジャックオランタン種が誕生した原因とされている。

地獄にも天国にも拒否されながら子孫を残すだなんて、ジャックオランタンの長とは余程タフに違いない。さすが稀だと言われるだけはある。と、初めてこの話を聞いた時はしみじみ思ったものだ。

さて、散々っぱら稀だ稀だと言っておきながら、豪星にはジャックの友達がいる。

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