吸血鬼が現存しているのはご存じだろうか。

なにを隠そう、俺こと中嶋豪星(なかじまごうせい)が、その化け物に該当する、生き証拠である。

自分に指をさして、伝説上の生き物である。と、自称するのはなはだ不思議な気分ではあるが。

とはいえ、正確に言えば「吸血鬼」であり「人間種」でもある。つまり、自分は混血児(ハーフ)の生まれだ。

生き物としての形がほとんど同じ所為か、吸血鬼と人間は子供がつくれるらしい。形が近ければ精子と卵子がくっつくなんて、伝説の生き物もたかが動物だ。

なぜ豪星が混血として産まれたかといえば、これもまた、アバウトかつざっくりとした経緯である。

普通、吸血鬼というのは、血統を守るため同じ吸血鬼のメスと子供を作るのが普通なのだが、豪星の父親というのは、「どうしても人間のメスを孕ませたかった」という理由で豪星を作ったらしい。

ちなみに、豪星の母親は病気を患い幼い頃に亡くなっていて、父親といえば蒸発中である。時々スマホで生存連絡があるくらいだ。

両親がほぼいない豪星に、吸血鬼の大事を教えてくれるのは「吸血鬼温存協会」という組織だった。

混血とはいえ、豪星もまた吸血の血を受け継いでいる。協会は豪星へのサポートも欠かさなかった。

豪星の身の回りの世話をしたり、(なんでも、吸血鬼は育児放棄が多いらしい。父親が蒸発したのもその辺りの事情かもしれない)豪星が自分で血を狩ることができるようになるまで、血液パックを送ってくれたり。病気になれば、吸血鬼を診ることができる医者を派遣してくれたり。大変世話になっている。

しかし、その至り尽くせりも、豪星が十五歳になるまでのことだった。

十五と言えば吸血鬼にとって成人の歳であり、これからはなるべく自分で血を賄うようにと、協会からの援助が強制的に減少される年齢でもある。

狩りの出来るからだが手に入れば、自然界に放り出す動物のようなものである。

とはいえ、豪星は本能が低いのか、「よっしゃ。それじゃあ今日からいっちょ血液を集めてやろう」という気が全く起きなかった。

へぇ。おれ成人したんだ。

じゃあ、もらえる血液の量が減るんだなー。くらいの気持ちである。

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