「うーん。検討しておきます」
「色よいお返事をおまちしておりまーす!」
「ははは。善処します」
二階のすべてを、ざっくり見終えたころ。「あ」猫汰がふと、立ち止まって振り返った。
「そうだそうだ。ダーリン。この前俺、土なべ割っちゃったでしょ?ついでに一階で買ってこようよ」
「そういえばそうでしたね。いきましょう」
一階に降りて食器コーナーにいくと、色々種類のある土なべを、これもあれこれ相談しつつ、選んでレジにもっていく。
カウンターで、鍋をふくろに入れてもらう最中。
「明後日こたつが届いたら、さっそくこれでお鍋つくるね。
ダーリンはなにが食べたい?」
「えーと……じゃあ、おでんが食べたいです」
この時期にコンビニで売り出されるおでんが、豪星は大好きだ。
それをこの人が作るとなれば、さぞ美味くなることだろう。
「わー、いいねぇ。じゃ、明後日はおでんにしようね」
明後日に楽しみがひとつ増えたなと思いつつ、鍋と猫汰といっしょに、豪星は店を出た。
*
「「せんぱーい……あのー……」」
あくる日の放課後。豪星と猫汰の教室にへんじけんじが顔をのぞかせる。
「なんだよ」
「どうしたの?」
「そのー……ですねー……」
非常にいいにくい。と言った風にお互いを見合ったあと、おずおず、双子が教室に入り込んでくる。
その際、「ほら、龍ちゃんいくよ!」けんじが廊下からなにかを引っ張った。引きずられてきたのは、イヤイヤする龍児だ。
「龍児くん?」呼びかけるなり、はっ!と顔を上げた龍児が、さっと青ざめる。どうやら尋常ではない用事らしい。
「おれ、やっぱもどる……!」
「駄目だよ龍ちゃん!」
「せっかくここまで来たんだ龍児!はらくくれ!」
きびすを返そうとする龍児を二人がかりで押しとどめる。
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