「な、なにが?」

「俺は!勉強がしたいんだ!だって!勉強できないと!あいつが!!あいつが豪星をつれてどっかに行っちゃうんだ!
俺そんなのやだ!俺も豪星といっしょにいたい!また豪星と学校いきたい!

だから!だから俺は勉強する!
勉強して勉強して豪星と同じ学校にまたいくんだ!

今はむりでも、やってればきっと、おれだって勉強できる!
それで!また豪星の近くにまでいくんだ!おれはそのためにがんばりたいんだ!!」

「……つまり、龍児くん。俺の進学する学校に受験してくれるってこと?」

「うん!」

「わー!ほんとに!?うれしい!きてきて!ちょっとむずかしい学校選んじゃったから大変かもしれないけど、応援してるね!
いや、違うか。
まってるね!俺、先に行って龍児くんのこと待ってる!だから、勉強がんばってね」

「…………、」

龍児は、涙にまみれた目をひとつ、ぱちりとまたたかせたあと。

「うん。まってて」

うれしそうにほころんでから、制服のポケットをさぐりだした。

何かをとりだした龍児に手をさしだされる。「手、だして、ごうせい」と言われたので、豪星も手を出すと。

「あ……これ」ずっと前に、豪星が龍児に買ってあげたコインを、てのひらにのせられる。

「おれの、一番大事なもの。もってて。豪星。
俺がお前の学校にいけたとき、俺にそれ、返して。やくそく」

そう言って笑う。友達の笑顔。

「……うん。約束する」

そんな風に約束のできる友達ができたことがうれしくて。

豪星の目にも、涙がこぼれた。



卒業式が終わり、さあ猫汰の家にいこうかと、彼の姿を探したのだが。

「……猫汰さん?どうされました?」

校門付近で見つけるなり、「どうしたもこうしたもないし」不機嫌な顔でにらまれる。

「さっきは、りゅーちゃんと?ずいぶん楽しそうだったねー?」

「あ、なんだ。見てたんですか。やだな。はずかしいじゃないですか。
……って、なんで手をこっちに差し出してるんですか?」

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