聞く耳を貸さないまま、通話が切れる。「ちっ!!!」腹が思い切りたった。

「ダメにんげんめぇえええ!!逃げてばっかりじゃねぇか!!
そもそも!卒業を息子の彼氏づてにお祝いするんじゃなくて!直接!あいさつくらいしていけよ!
もおおおお!いまどこにいるのかな!はやくダーリンに言わないと!」

卒業直後に彼氏の父親が居なくなっただなんて、悲しいじゃないか。

きっと入れ違っても、彼氏なら笑って「ああ。またですか」と言いそうだけど。そういう問題じゃないよね!

せめて一目だけでも会わせてあげないと。そう思い、来た道を引き返して、彼氏のもとに戻る。しばらくして見知った背中を見つけると。

「あ!だーり……」彼を呼ぶ。途中。その向こうに誰かの影を見つけた。それは。



「ご、ごうせ、お、おめ、おめでと……おめ……でと……」

「りゅ、龍児くん!そんなに泣かないで!だいじょうぶ!?過呼吸しそうだよ!?」

「う、うぇ、うえぇ……。ごめ、……おれ、俺。もう泣かないってきめたのに。きめたのにぃい……っ」

「うんうんとりあえずおちつこ!?あ、ちょっと向こうで座ろうか」

体育館を出た豪星を追いかけてきたのであろう龍児に、呼び止められて、しばらく。

おめでとう。ありがとー。と、話しているうちに、龍児が泣きだしてしまったので、なぐさめているところである。

「ほら。ちょっとここすわって。飲み物かってきてあげるね」

「うん……」

席を外して、自販機で飲み物を買い、龍児に渡すも、中々プルタブを開けようとしない。落ち込んだまま、うなだれている。

「ごうせいが、卒業すると、さびしい」

「そんな。今生の別れじゃあるまいし。連絡すればいつでも会えるよ。
さびしいって言えば、龍児くんこそ、最近あんまり教室にきてくれなかったよね。どうかしたの?俺のほうこそさびしかったよ」

「……べんきょうしてた」

「そうなの?あ、もしかして、猫汰さんに勉強みてもらったとき、だめだしされたの気にしてるの?
いいよ龍児くん。そんな風に思いつめなくても。龍児くんには龍児くんの得意なことがあるんだから。それが勉強じゃなくてもいいんだよ。
好きな事しながら、ゆっくり生活できればいいじゃないか」

「ちがう!」なだめている最中、叫ばれておどろく。

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