ちょっと言い返したら、ぷりぷり怒って行ってしまった。バレンタインで大泣きするくらい俺のことが好きなくせに、へんなとこ地雷あるよね、あのひと。

追いかけようとしたが。

「――――――うわ!!」

とつぜん。誰かに背後からひっぱられる。「だれ!?」驚き振り返ると。そこには。



もー!しんじらんない!なにあの言い方!さいきんダーリンてばちょっと調子のってない!?

俺がダーリンのこと大好きだからって、余裕すぎない!?俺なめられてない!?

……でもしょうがないかー。俺、ダーリンのこと、大好きだもんね。

あーあ。惚れた弱みってこわいなー。自分で体験するとは思わなかったよねー。

彼氏に対しての、怒りなんだかのろけなんだか。よくわからない感情を持て余しているあいだ。「ん?」制服のポケットが振動する。ながい。誰か電話をかけているようだ。

取り出して、画面の表示を確認すると。

「あれ。公衆電話だ」ということは、おとーさまかな?

いちおう、彼氏の父親に自分の電話番号は教えてあったし、いつかに彼氏が「父親の電話は公衆電話からかかってくる」と聞いていたから、間違いないと思うんだけど。

「もしもし?おとーさま?」とりあえず通話に出て、確認。すると。『うんそうだよー。ごめんね猫ちゃん、とつぜん電話して』大当たり。

『いま、電話してもだいじょうぶ?』

「大丈夫だよー」

『ところで、うちの息子、そばにいたりする?』

「え?いないよ」

『よかったー。ちょっとね、猫ちゃんとふたりで話したかったから』

「ん?おれと?どーしたの?」

『……ええと、なんていうか、うちの息子、いつもありがとね?』

「どうしたのおとーさま。急にあらたまっちゃって」

『いや、今日、うちの息子の卒業式じゃない?
僕なりにね、その、彼が高校を卒業したっていう事実に、ちょっと、達成感っていうか、感動っていうか、まあそんなことを感じたわけ。
不思議だよねぇ、豪星くんが中学生のときはそんなこと感じなかったのに。高校生は、大人にもう近くなってるからかな。
あ、猫ちゃんも卒業おめでとー』

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