「喜ぶだろうけどさ……」
親子そろって、息子の彼氏にチョコあげるっていうのもどうなの?いいんだけど。
父親からチョコをうけとり、レジで会計を済ませると、ついでに日用品雑貨を買って帰宅する。
チョコレートは紙袋に入れ、外から見えない状態にして冷蔵庫にしまい。「あれ?ダーリン、この紙袋なに?」ときどき、冷蔵庫を開けた猫汰に見られても、あけられない限り気づかれないようにしておく。
そして、バレンタイン当日。
猫汰が「夕方の5時にダーリンのおうちに行くから、そのときチョコをあげるね!」と言っていたので、こちらもチョコを机に用意してまっていると。
「おまたせーーーー!」きっちり。夕方の5時に合わせて猫汰がやってくる。
「じゃーん!みてみて!今年のチョコレート!カップケーキにしてみたよ!あのねーアイシングでね、三匹の猫ちゃんの絵もかいてね」
「「こっちもどーぞ」」
「え??」
今年の自信作を披露する猫汰に、自分と父親とでチョコレートを差し出す。
きょとん。としていた彼氏が、「あ、え?あ、俺に?え、ダーリンとおとーさま、俺にくれるの??」分かったけど分からない。といった風におろおろし始める。
「く、くれるの?え?いいの?」
「はい。もらってください」
「いつもありがとうねー」
「え……あ……うん」
チョコレートを受け取り、しばし茫然としていた猫汰だったが。やがて。
「ううう……!」片手で顔をおおい、泣き始めた。
「え!?どうしたの猫汰さん!」
「なんか……!なんだろう……!感動しちゃって……!」
「ね?豪星くん、僕いったでしょ?あげれば猫ちゃん喜ぶってさ。僕の言った通りだったでしょ?」
「いやいや泣くほど喜ばないでくださいよ!このくらいで!」
「だってぇ……!うわぁああん!!」
「ははは。よかったねぇ猫ちゃん。買ってきたかいがあったね、豪星くん」
「あーもー!泣かないで!猫汰さーーん!」
ひとしきり、猫汰はむせび泣いたあと。
「よし!全部開けてみんなで一緒に食べよう!コーヒーいれるね!」
そう言って、おいしいコーヒーをいれてくれました。
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