「うーん……」
まあ、それもそうか。ということで、ものは試しにと、豪星はチョコレートを求めるべく、大型スーパーへとむかった。
父親つきで。
「なんでついてくるの……」
「息子と!スーパーで恋人のチョコレートを選ぶっていうシチュエーションを体験してみたかった!」
出た。謎のレジャー感覚。
とりあえず邪魔だけはするなと釘をさし、父親づれでチョコレート売り場を探す。
店員にあらかじめ場所を聞き、二階のエレベーター前に特設場がある。という情報まではたどり着いたのだが。
「うわ!」
売り場を見てたじろぐ。女性ばかりいて、男が入ったらものすごく浮きそう。
せっかくきたけどやめようかな……と、思いかけている豪星の横を、「いこいこー」父親があっさり通り抜けて、入り込む。
「どうしたの?おいでよ」手まねきされ、何度もためらいながら、ええいと腹をきめる。
うう。やっぱり視線をかんじる。
「さっさと買ってさっさと出よう……」
「え?なんで?おもしろいじゃない。色々あってさ。じっくりみようよ」
うう……。この自由人め……!
とはいえ。確かに。父親の言う通りチョコレート売り場はとても面白いつくりをしていた。
棚が四列にわかれていて、それぞれに、会社別のチョコレートが展示されている。
人気のものはすぐに売れてしまうのか、売り切れの札がはってあるものもある。
予算は1000円以内なので、それを目安に棚を見てまわり、目ぼしいものをいくつか選んでいく。
最終的に、女性てきらしくなく、デザインがかたすぎず、おいしそうなチョコレートをひとつ、しぼって、それをレジに持って行くと。
「ごうせいくーん。これもいっしょにかってー。お金あとで払うからー」父親がみずからもチョコを差し出してくる。
「なに?誰にあげるの?」
「猫ちゃん」
「ええ?父さんも猫汰さんにあげるの?」
「うん。なんか、見てたら僕もあげたくなっちゃった。ついでついで。
みてみて、このチョコ。いいでしょ?猫ちゃんの大好きな、青猫ちゃんのデザイン。かわいいでしょ?バレンタイン限定デザインだって。
猫ちゃん。青猫ちゃんは豪星くんに似てるから大好きだって、言ってたじゃない。きっとよろこぶよー」
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