「ん、ありがと」

「龍ちゃん!俺もなんか勉強したくなってきた!」

「ん、そっか」

「よっしゃ!俺らも本屋行くか!勉強するための本かおーぜ!」

「買おう買おう!お年玉まだ残ってるしね!」

「ん、いくか」

「「いくぞーーー!」」

自転車に再び乗り込んで、ここから一番ちかい本屋へ走り出す。

年末の暗雲は、すでに心になく。俺たちの気持ちは新年どうよう、ぴかぴかに輝いていた。


2月になると、あったかい日とさむい日がまざって、ときどき肌が混乱するような心地になる。

こたつ、どうしようかな。もうしまっていいかな。と、そのこたつに入りながらなやんでいると。

「みてみて豪星くん。バレンタイン特集だってー」

こたつの反対側で、ごろ寝しながらテレビを見ていた父親が、画面をゆびさした。つられてみると、たしかに、バレンタイン特集。という文字がでかでかと目に入る。

「さすがにバレンタインは、はりきって作るかな。猫汰さん。いやまあ、味に関してはもうどっちでもいいんだけど」

「すごいね息子。僕、いまだにはりきった方は無理だよ」

「根性ないね」

「君はあるよね」

「お前のせいでな」

「しってるしってる。
お。豪星くん見て見て。男の子がバレンタインのチョコかってるよ。彼女にあげるんだって」

「え?あ、ほんとだ。へえ。最近って、男がチョコ買って、彼女にあげたりするんだ」

「番組、女の子のインタビューにうつったよ。へー。彼氏からチョコもらえると、うれしいんだって」

「へー。そうなんだ」

「どう?せっかくだし、豪星くんも猫ちゃんにチョコあげてみたら?」

「え?おれが?」

「うんそう。ほら、バレンタインってさ、もともと、感謝のきもちをチョコとして渡すものじゃない?
豪星くん。猫ちゃんにたくさんお世話になってるんだから。チョコのひとつくらいたまにはあげてみなよ」

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