「ん、ありがと」
「龍ちゃん!俺もなんか勉強したくなってきた!」
「ん、そっか」
「よっしゃ!俺らも本屋行くか!勉強するための本かおーぜ!」
「買おう買おう!お年玉まだ残ってるしね!」
「ん、いくか」
「「いくぞーーー!」」
自転車に再び乗り込んで、ここから一番ちかい本屋へ走り出す。
年末の暗雲は、すでに心になく。俺たちの気持ちは新年どうよう、ぴかぴかに輝いていた。
*
2月になると、あったかい日とさむい日がまざって、ときどき肌が混乱するような心地になる。
こたつ、どうしようかな。もうしまっていいかな。と、そのこたつに入りながらなやんでいると。
「みてみて豪星くん。バレンタイン特集だってー」
こたつの反対側で、ごろ寝しながらテレビを見ていた父親が、画面をゆびさした。つられてみると、たしかに、バレンタイン特集。という文字がでかでかと目に入る。
「さすがにバレンタインは、はりきって作るかな。猫汰さん。いやまあ、味に関してはもうどっちでもいいんだけど」
「すごいね息子。僕、いまだにはりきった方は無理だよ」
「根性ないね」
「君はあるよね」
「お前のせいでな」
「しってるしってる。
お。豪星くん見て見て。男の子がバレンタインのチョコかってるよ。彼女にあげるんだって」
「え?あ、ほんとだ。へえ。最近って、男がチョコ買って、彼女にあげたりするんだ」
「番組、女の子のインタビューにうつったよ。へー。彼氏からチョコもらえると、うれしいんだって」
「へー。そうなんだ」
「どう?せっかくだし、豪星くんも猫ちゃんにチョコあげてみたら?」
「え?おれが?」
「うんそう。ほら、バレンタインってさ、もともと、感謝のきもちをチョコとして渡すものじゃない?
豪星くん。猫ちゃんにたくさんお世話になってるんだから。チョコのひとつくらいたまにはあげてみなよ」
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