「わーーーーー!龍ちゃんすげーーーーー!」
「龍児すげーーーー!」
食べ過ぎて苦しいのか、龍児が仰向けに寝転ぶ。そのまわりを、わいわいかこんで祝辞(しゅくじ)を上げた。
大会が終わると、龍児の回復を待って賞金を受け取りに行く。
賞金を受け取った龍児が、嬉しそうにそれをしまいこむ。めずらしく、にこにこした笑顔だ。
「よかったねー龍ちゃん」
「お前がんばったもんなー」
「うん。がんばった」
「ところで龍ちゃん、なんのゲーム買うの?1月3日でもうゲーム屋開いてるだろうし、ついでに買ってく?」
「ううん。ゲームはかわない」
「え?ゲームかわねぇの?じゃあなに買うんだ?あ、たべもの?」
「ううん。本」
「「ほん??」」
龍児が?え?本?みたいな動揺を、兄と共有する。
その隣で、ふっと、真顔になった龍児が、しまいこんだ賞金を取り出しうつむいた。
「俺は、年末に、あいつにがんばってないって言われて、そうだなって思った。
がんばってないから、豪星とられたって仕方ないって思った。
だから、あいつのいうとおり、俺はがんばろうと思う。
お正月のあいだ、ずっと、それを考えてた。それで、今日、きめた。
がんばってないことをがんばって、俺は豪星にもっとすきになってもらう。
豪星が俺とあそんでくれて、俺が嬉しかったぶんだけ、豪星にいっぱいかえしたい。
そのやりかたが、きっと本に書いてある。
そんな気がするから、本を買って俺は勉強する。
きらいな勉強を好きになる。
そのために、今日おれはがんばった」
決意のまなざしを向けられ、思わずしびれた。
なんてかっこいい事を言うやつだ。ますます好きになってしまった。
兄もきっと、同じことを考えているだろう。
俺たちは兄弟だから、同じものを好きになるのだ。
「龍児……!お前ほんとにかっこいいな!」
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