三万円。という部分で、龍児がはっと顔をあげる。もう一押しだ。
「賞金で!お前の好きなゲームが買えるぞ!メシもいっぱいくえるしいいことづくめだろ!」
「…………」
「「やろうぜ!俺らもやるから!」」
「うん!やる!」
力強い賛同を得て、「「よっしゃー!」」三人、参加募集の受付に並ぶ。
机に案内されて、それぞれ席につくと、「それでは、新春初うどん。早食い大会はじめまーす!」それぞれの前に汁の入った器が置かれ、合図とともに大会が始まる。
観客からの声援に囲まれながら、器にうどんがもられていく。食べてみると、とても美味しいうどんだった。あっという間に完食してしまう。
なんだ。これなら俺、けっこういけるんじゃね?
そう思えていられたのは、5杯目までだ。
「うわ……もう無理」
6杯目を食べきった直後、根を上げる。ハシを器に置くと「脱落(だつらく)」になるルールなので、悔しくおもいながらも、ハシを置く。
「俺もうだめ!」隣で兄も脱落する。食べきったうどんは6杯。兄弟そろって同じ記録を樹立(じゅりつ)したようだ。
肝心の、龍児といえば。
「おおー!龍児すっげぇ!8杯食ってる!」
「龍ちゃんすごい!がんばってー!」
兄弟そろって応援側にまわり、いまだうどんを食べすすめる龍児に声援をおくる。
まわりを見れば。ほとんどの参加者が脱落したようで。席に残っているのは、龍児と、もう二人だけのようだ。
やがてその内一人も脱落し。のこるは二人。どちらも、15杯目のうどんに入る。
少し苦しそうだが、龍児はまだ余裕そうだった。相手も同じ風だ。
しかし、18杯目ともなれば、「う、」龍児がお腹をかかえてうめきはじめた。限界に近づいたようだ。
「がんばれ龍ちゃん!」
「龍児がんばれー!」
声援が熱くなる中、龍児は18杯目を食べきり、19杯目も平らげて。
20杯目。
「……もうだめ!」龍児。ではなく、相手が、20杯目を食べきったところでとうとう根を上げた。
同じく20杯目を食べきった龍児は、21杯目も完食し。見事、優勝する。
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