「はい。いま、ふと思い出しました」
「ふーん。そっかー。へえ、おとーさまの誕生日ねー」
不意に猫汰があごに手をそえ、「ねえダーリン」顔をあげる。
「おとーさまの誕生日、お祝いしよっか」
「え??」
「お祝いしようよ。なんていうか、彼氏の父親の誕生日を祝ってあげるって、俺の気持ちてきに、とてもしあわせ」
「そんなもんですかね」
「うん。ということで、さっそく準備しようよ」
そう言って、猫汰はスマホを取り出すと、「えーと、誕生日、お祝い……」つぶやきながら検索をはじめた。しばらくして。
「ねえダーリン!これなんていいんじゃない!?」
みてみてと、スマホを傾けてみせる。そこには。
「えーと。なになに。風船パーティ?」
「そうそう。風船いっぱいつくって、部屋にいっぱいならべるんだって。いいでしょ?きれいで。
だっておとーさまってさ、絶対ものあげても喜ばないじゃない。家具すら持ちたくない人なんだか。
だから、視覚でせめよう!」
「なるほど。
いやでも、喜びますかね?」
「うん。よろこぶと思うよー」
というわけで、3日は父親の誕生日会と決まり、さっそく、元旦から開いている、風船が売っているであろうホームセンターへと出かけた。
二人でうろうろ、店内をまわり、途中。
「あ!ダーリンみてみて!カーテン売ってる!」カーテン売り場で脱線。
「トリニに行ったときも、カーテン売ってましたね」
「売ってたねー。取りそろえてるカーテンのガラは、トリニのほうがかわいいねー。
俺たちがさ、卒業してさ。新居にひっこしたら、カーテンもそのとき買おうねー」
「そうですね。カーテンがないと、直射日光がすごいですからね」
「トリニ、三匹の猫ちゃんガラのカーテン売ってくれないかなー。どうせ部屋を一新するなら、おなじガラで色々そろえたいなー」
「猫汰さん、裁縫お上手なんですから、ないものは自分でつくればいいじゃないですか」
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