あわてて駆け寄る。いきなり殴られて驚いたのであろう、龍児は、相手をみあげて茫然としていた。
「なにすんだてめぇ!!」兄が叫ぶも。
「それはこっちのセリフだ!!ひとの!恋人との貴重な時間つぶしやがって!!ふざけんなよ!!」
怒声に怒声がかえる。先輩が一歩、こちらに踏みだした。「おい龍児!!」胸倉をつかむ。そして。
「俺はな!!お前が嫌いだ!!
いつもいつもダーリンに甘えすがって、ぶらさがって!!
それでいいと思い込んでるお前が嫌いだ!!
お前の!!相手をまったくかえりみない無理解がきらいだ!!
お前の頭の悪さが嫌いだ!!
ふざけるな!!ダーリンはな!ほんとは甘えたい人なんだよ!!
親が死んでてダメ人間で!!それを乗り越えようとして辛かったひとなんだよ!!
辛かったことに泣いたんだよ!!
だから優しくなったんだよ!!
それをなんだお前は!ダーリンが優しいからっていつまでもいつまでもべたべた甘えこきやがって!!
ふざけるなふざけるな!!
俺は努力した!彼を支えられるよう毎日まいにち考えた!!
大好きだからだ!!
愛してるからだ!!
だから俺は!!いつも!!ダーリンにもっと好きになってもらいたくてがんばった!!
だから俺はむくわれるべきだ!いつまでもいつまでも!
俺が彼のことを愛しているかぎり!!
彼と俺が生きているかぎり!!
俺はむくわれるべきだ!!
その努力をかけらもしない!
お前のことが大嫌いだ!!」
言い切ると、先輩は息を切らせ、「つうことで、もう邪魔すんなよっ」ふたこと放つと去って行った。
罵声をあびた俺たちは、なにも言い返せず。
その内に。
「……ないで」
「龍児?」
「いか、いかないで。いかないで……ごうせぇ……っ、
つれていかないで……っ、
う……っ、うぅ………、」
「龍ちゃ……、」
「ううぅ……、うわぁぁあああああぁあああああああああああぁぁぁぁあああああああああ、ぁああああああああああああああああぁぁああああぁ……!」
大声で泣き叫ぶ龍児の声を聴いていた。
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